クルトンの正体

 スープやシーザーサラダなどに乗っかっている、カリカリの物体、クルトン。
 子供の頃は、「これって何だろう?」と思っていましたが、何のことはない、あれは「パン」なのです。

 パンを少し乾燥させ、オーブンで焼いたり、オイルで焼いたり、揚げたりして作ります。
 シーザーサラダの本場アメリカでは、ハーブやスパイスで風味付けをしたオリジナルのクルトンを作っている店が多く、クルトン専門のメーカーまであるそうです。

●クルトンをスープに入れるわけ

 小さなクルトンがパラリと浮かんだコーンポタージュは、昭和の洋食の代表的なスープのイメージでしょう。
 
このクルトンをスープに浮かせるスタイルは、何百年も昔の、中世期のフランス料理に起源を発します。

 大昔のフランスでは、宮廷でも料理は手づかみで食べていました。
 スープも、直接手ですくって飲んでいたそうです。
 しかし、サラサラのスープを手ですくうのは難しいので、スープにパンを浸して、それを手で取って食べていました。

 つまり、当時はスープも、飲むというよりは、食べる料理の一つだったわけですね。

 フランスにナイフ・フォークの文化が持ち込まれるのは、16世紀以降のこと。
 イタリアの名家・メディチ家のカトリーヌ・ド・メディシスが、フランス王アンリ二世に嫁いだ際に、当時フランスよりも進歩的だったイタリアの食文化をフランスに持ち込んでからです。

 ナイフやフォーク、スプーンといった食器類が登場すると、スープにパンを浸す必要がなくなり、純粋に「飲む」料理として、スープを楽しむようになりました。

 しかし、料理としては、スープとパンの相性はとても良いので、パンは、スープの「具」として残りました。
 ただ、どっぷり浸す必要性はないので、スープを主役として、パンは小さくなっていき、そもそもパンは料理と別に用意して食べるので、もはや飾りのような存在になり、現在の小さなクルトンになったそうです。

 つまりクルトンは、フランス人が料理を手で食べていた時代の名残というわけです。

 とはいえ、クルトンのカリっとした食感が、味にも良いアクセントになっているので、ただ飾りとして残ったわけではないでしょう。

 僕は子供の頃、コーンポタージュに浮かんでいるクルトンを食べるのは楽しみの一つで、クルトンが浮いてないコーンポタージュの店だと、ガッカリしたものです。

 また、オニオングラタンスープなどでは、大きなクルトンを入れるのが通例で、これが具の役割を果たしています。
 


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