「業務用」とは

 よく、一般家庭とお店では、使われている調味料などに違いがあると思われています。
 
一般家庭では手に入らない、商売人専用の特別な味のする調味料があって、お店はそれを使っているから一般家庭とお店では味が違うのだ、と言われる事もあります。

 これは、よくありがちな誤解で、実際にお店で使っている食材と家庭で使っている食材には、ほとんど違いはありません。
 では、
お店などで、「業務用」と書かれた缶詰とかパックを見たことがある人もいるかと思いますが、あの「業務用」食材とは一体どういうものなのでしょうか?

 実は、業務用食材というのは、中身に違いがあるというより、容量や入り数、包装などに違いがあるだけのことなのです。
 
食品メーカーは、一般家庭向けに商品を売り出す場合、当然スーパーなどで陳列されて売るわけですから、他社製品との競争もありますし、とにかく見た目にも様々な工夫をしなければなりません。そこで、パッケージに様々なデザインの工夫をこらせば、それだけコストが上がります。人気のキャラクターなどを使えばより以上にコストがかかります。 
 また、家庭向けなわけですから、ひと袋あたりの内容量というのも、普通に考えて一世帯の家庭が賞味期限内に使いきれるだろう、つまり「使いやすい・お手ごろ」な量を考えてパックします。しかし、商品一つあたりの量を少なくして、商品の製造個数が増えれば、それだけ包装などの手間とコストがかかります。だから、スーパーなどでも、大入りパックになればなるほど割安になったりするでしょう。
 一方、飲食店で使う場合は、包装などの見た目なんかはどうでもよく、あくまで中身の味が全てです。また、使う量が一般家庭とは比較にならないので、調味料ならキロ単位とか、食用油なんかは17リットルくらい入った「一斗缶」が一般的なサイズで、とにかく量は多くてもいいから、その分安く仕入れようとするのです。
 
つまり、「業務用食品」というのは、簡単に言えば、包装などにはコストをかけず、コストパフォーマンスが良いことにウェイトをおいて、大容量で作った製品、ということになるでしょう。

 そうして現れるのが、5キロとか10キロもの特大パックの塩であったり、ペットボトルに入った液体調味料です。また、その包装も非常に地味で、青いラインに会社マークと商品名、原材料だけが愛想なく書かれているだけであったりします。
 また、長期保存できるものではなく、生ものや生のダシの場合は、受注生産の場合もあるので、こうしたものも、飲食店のように継続して大量購入する前提がないと注文を受けないので、一般の人が少量では購入できない場合もあります。
 
これらが、いわゆる「業務用」なのです。

 最近では、消費者もコストパフォーマンスを重視するようになったので、見た目などは気にせずに、そうした割安な業務用を購入する人も多くなってきました。さすがに、タンクのような缶に入ったブイヨンなどを家庭で消費することはまずないでしょうけど、塩や砂糖ならば、そうそう劣化するものでもないし、家庭でも充分使いきれるので、少々場所を取ったとしても業務用の大入りパックを買った方がお徳だという事なのでしょう。そのため、最近では一般のスーパーでも業務用食材を置く店も増えましたし、半分は一般向けに開いている、業務用食材の専門店も増えました。

 ただ、お店専用に作られた、特別な調味料なども、実際のところ、存在します。
 しかしそれは、「業務用」という分類とはやや違います。
 それは、メーカーへの特注品で、お店が特別に、自分のお店専用に作らせた仕様のソースなどです。調味料とか、ハンバーグのような加工食材を、一定のレシピでメーカーに作ってもらったり、ラーメン屋の麺などでも、その店専用に製麺所に作ってもらうことはよくあります。

 これは、店の中で仕込むにはどうしても手間やスペースがかかりすぎて難しい場合に、メーカーに交渉して自分の店専用のものを作ってもらっているのです。ラーメン屋の麺なんかが典型的な例で、他によくあるケースでは、最初は自家製でやっていたのが、人気店となって売上が伸びると、手作りでの仕込みが追いつかなくなり、そのレシピをメーカーに渡して作ってもらう、というケースです。

 こうした場合、材料費という面では店で手作りするより高くなりますが、自家製でやる手間を考えれば、逆に効率的だったり、総合的にコストが下がるとか、品質が安定すると判断した場合に行なわれます。
 ただ、商品メーカーがこうした特別仕様品の製造を引き受けるのは、当然その店が継続して大量に買ってくれるという前提があるから可能なのであって、一般家庭が、少量・単発でメーカーに作ってもらおうとしても、まず無理でしょう。無理にお願いしたところで、とんでもない製造コストになるでしょう。

 こういった当別仕様の食材に関しては、あくまでその店の特注品なので、基本的には他には流通しません。だから、これを一般の人が見たならば、「あの店は、一般では手に入らない特別な調味料を使ってる」と勘違いされることがあるかもしれません。でも、もともと自分達で作り上げた味なので、決して裏ワザ的なものではありません。
 


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