ヒラメを美味しく食べる

 真鯛と並ぶ魚の王様、ヒラメ!

 風味の強い真鯛に比べ、すっきりとした清々し美味しさが魅力。
 冬の寒鮃が最高で、春の真鯛、夏の鱸と、白身魚を代表する魚です。

 どう料理しても美味しいですが、出来ることなら天然ものを丸で買って、自分で捌いて食べることをおすすめします。
 鮃は「五枚おろし」といって独特のおろしかたをしますが、慣れれば難しくはありません。

 丸から捌くともれなく希少部位「エンガワ」もいてくるし、鮮度が良ければ肝も美味しい。
 時間経過にも強く、むしろ数日置いた方が旨くなる魚なので、食べきれないこともないと思います。

 今では回転寿司でもおなじみの「エンガワ」は、本来ヒラメの縁側のことです。
 ヒレに近い部分で、運動量が多いため筋肉がよく発達しているので、プリプリとした独特の食感があります。
 少量しか取れないので、高級部位にあたります。

 HIRAME5.JPG - 41,558BYTES
  五枚におろしたヒラメ。赤枠部分がエンガワ

 ちなみに、安い回転寿司や、パックで大量に詰めてあるエンガワは、ヒラメではなくカラスガレイかオヒョウのエンガワです。(どちらも巨大なカレイ)

 天然ヒラメは、数日熟成させて食べるのが絶対におすすめです。
 獲れたてのヒラメは非常に身が引き締まっていて、その食感も一つの魅力かも知れませんが、実は旨味には欠けます。
 ヒラメといえば「昆布締め」が有名なことでもわかるように、旨味を添加して食べ方がされるくらい味は繊細なので、獲れたてのヒラメをそのまま刺身で食べるのは、ヒラメの最良の食べ方とは思えません。

 ただ個人的には、昆布締めではなく、塩で締めただけのヒラメが最高だと思っています。

 昆布締めも美味しいですが、当然ですが昆布の風味がヒラメに移ります。
 ただ、ヒラメはクセのない風味も魅力の一つだと思っているので、昆布締めにすると昆布の風味が勝ってしまい、せっかくのヒラメらしさがなくなるようにも思うのです。

 そこで、ごく薄く塩をし、浮いてきた水分をふき取って2〜3日寝かしたものを刺身で食べると、浸透した塩によってヒラメの旨さが引き出され、最高に旨くなります。
 これを握り寿司にすると絶品です。
 この食べ方が、ヒラメの純粋な美味しさを一番味わえる食べ方だと個人的には思っています。
 ポイントは、塩はごく薄くしかしないことです。塩味が立ち過ぎても純粋な味わいが損なわれてしまいます。

 ヒラメは、生でも、煮ても焼いても美味しい魚です。
 皮も捨ててはいけません。焼くなら皮付きのまま焼いても良いし、皮をひいてしまったのなら、湯引きして「ヒラメの皮の握り寿司」にしても美味しいし、味噌汁に入れても美味しい。
 
骨もそのまま捨ててはいけません!
 骨と骨身から美味しい出汁がとれるので、鍋にしたり、湯がいた汁で味噌汁を作っても最高です。(これはたいがいの白身魚で言えることですが)

 ……ただ一つ、ヒラメには残念なことがあります。
 最近(といっても十年近く経ちますが)、ヒラメに新しい寄生虫が発見されてしまいました。
 「クドア・セプテンプンクタータ」というもので、これの厄介なのは、目視でわからないことです。
 加熱して食べれば問題ありませんが、刺身で食べてこれにあたると、嘔吐下痢の食中毒症状を発症します。(重篤にはならず、数時間で回復しますが)

 主に養殖ヒラメで発見され、天然ヒラメに寄生している確立はかなり低いそうですが、ヒラメの刺身を食べるのが少し怖くなってしまいましたね…
 丸魚であれば、天然ものと養殖ものの見分けは簡単ですが、刺身のサクで売られてしまったら、天然なのか養殖なのかの判断は難しく、そうなると買うのはためらってしまうし、安い居酒屋でヒラメの魚を食べるのも躊躇してしまいます。

 最近では検査体制が強化され、養殖ヒラメでもほとんど発生してしないそうですが、養殖のヒラメを刺身で食べる時は、注意が必要です。

 


 →雑学indexへ