シーフード・ドリアの作り方

 マニアなドリアの薀蓄を書いているページだけに、せっかくなので気合の入ったドリアの作り方を紹介します。
 本格過ぎて
手間はかかりますが、めちゃくちゃ美味しいと思います。
 そのへんの安い洋食屋のドリアとは比べ物にならないでしょう。

 
【材料】
 ・有頭エビ
 ・ホタテ貝柱
 ・野菜(タマネギ、ニンジン、ニンニク、セロリ、パセリ、マッシュルーム)
 ・牛乳
 ・生クリーム
 ・イタリアトマト缶
 ・生米
 ・パルミジャーノ・レジャーノ
 ・卵黄
 ・小麦粉
 ・塩
 ・香辛料(白コショウ、ローリエ、サフラン、クローブ、ナツメグ、タイム、エストラゴン)
 ・白ワイン
 ・ブランデー
 ・バター
 ・植物油

【スタンバイ】
 段取りを考え、仕込みからはじめます。

@野菜仕込み
 タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニクを用意し、ブイヨン(出汁)の煮込み用に使うざく切りと、具やソース用に使うアッシェ(みじん切り)の二種類をスタンバイします。
 パセリは茎をちぎって、葉をアッシェします。
 マッシュルームはスライスします。

Aブイヨン仕込み
 深い鍋に植物油をひき、@でざく切りにした野菜を軽くソテー(炒める)します。
 分量は、たっぷりのタマネギとほどほどのニンジンに、少量のセロリとニンニク。
 じんわりソテーし、焼き色はつけません。
 全体がしんなりしたくらいで、お湯を加え、砕いた白コショウ、ローリエ1枚、パセリの茎、セロリの葉を入れ、アクを取りながら40分程度煮込みます。
 沸騰させると濁ってしまうので、弱火で軽くフツフツした状態で煮込みましょう。

 この出汁のことを、野菜だけで作った「ブイヨン・ド・レギューム」と言い、優しい味の万能ブイヨンです。

 味の出来栄えとしては、水っぽくなければ正しい状態です。

Bトマトペースト仕込み
 イタリアの完熟トマト缶を、手鍋かフライパンで煮詰めます。
 水っぽさがなくなり、全体がドロっとしたら、シノワで濾して、出来上がり。シノワが無ければ、目の細かいザルでも構いません。
 トマト・コンサントレ(濃縮トマト)のようなものです。

Cピラフ仕込み
 
手鍋を用意して多めにバターをひき、@のタマネギとニンジンのアッシェを弱火でソテーします。

 
 全体がしんなりしたら生米を入れて、さらにソテーします。

 全体に火が入ったらAのブイヨンを注いでサフランをちょっぴり入れ、塩・白コショウで薄く味付けし、全体を合わせたら、炊飯器に移して炊きます。(ピラフ作りに慣れていれば、手鍋でそのまま作っても構いません)

 ブイヨンの量は、普通にごはんを炊く時に入れる水より多めに入れたほうがうまくいきます。
 出来栄えの目安としては、普通のごはんのようにふっくら仕上げるのではなく、表面がちょっと乾いた感じで、パラパラしてるくらいが正しい状態です。

 ブイヨンが薄味なので、かなりあっさり味のピラフになると思いますが、それで問題ありません。
 味の強いブイヨンを使ってしっかり味のしたピラフにしても悪くはないのですが、ソースがかなり濃厚なので、ピラフは軽い味のほうが、味のバランスが良いと思います。

 なお、ネットの口コミサイトやグルメブログなどで、某ホテルのシーフード・ドリアの中のピラフがパラパラしているのを食べて、「安っぽい冷凍ピラフを使っている」とか書いている人を見ますが、パラパラしているのが正しいピラフです。
 確かに、レストランではピラフを作り置きして、冷蔵か冷蔵してスタンバイしていることが多いので、加熱が不十分で「冷たくポソポソ」という可能性はゼロではありません。
 しかし、米は冷凍しても、熱々にすれば元に戻るので、ちゃんと温度が上がっていてパラパラなのは正しいピラフの状態であり、冷凍モノというのは関係ないです。

Dソース・ベシャメル仕込み
 ベースとなるホワイトソースの仕込みです。
 ベシャメルは、バターとほぼ同量の小麦粉を合わせ、その9〜10倍の牛乳でのばすのが基本的な分量です。
 鍋にバターを溶かし、ふるいにかけた小麦粉を加え、ホイッパーでよく混ぜ合わせます。
 火は弱すぎず、しかし焦がさない火加減で、表面がフツフツしてるくらいを維持し、混ぜながらしっかり火を入れます。
 最初はベタベタしてたのがなめらかになり、ほんのわずか色づたように見えたら、冷たい牛乳を入れ、しっかりホイッパーで溶きながらのばします。


 そこに、クローブ・ナツメグ・白コショウを加え、塩で薄味に味付け、焦げないようによく混ぜ合わせながら、とろんとするまでしっかり火入れします。

 グラタンやドリアに使うベシャメルは少しゆるめのものを使いますが、後から牛乳でのばしてゆるくするのは簡単なので、最初はかために仕上げて良いと思います。

 完全に火が入ったらシノワで濾して出来上がりです。

 なお、小麦粉にちゃんと火を入れずにグラタンを作ると、オーブンで加熱したあとにデンプンが固まり、糊のようにベトベトになってしまうので、きちんと火を入れましょう。

Eソース・モルネ仕込み
 
Dで作ったベシャメルを少し取って温め、パルミジャーノをたっぷり加えて溶かし、火を止めてすぐ少量の卵黄を手早く混ぜたら出来あがり。
 結婚式などでよく出てくる、伊勢海老のテルミドールなんかに使われているグラタンソースの定番です。

 
Fソース・アメリケーヌ仕込み
 
エビは新鮮なものを使いましょう。
 エビは殻を剥き、ホタテ貝柱は1/4程度にカットします。
 エビの頭と殻を使うので、殻は捨てません。特に頭の中のミソが重要です。
 エビは身から出汁があまりでないので、頭と殻を使って旨みと風味を引き出したこのソースが味のポイントになります。
 ※ここで使用しているのは活けの車海老です

 まず、@で用意した、タマネギ・ニンジン・ニンニク・セロリのアッシェを植物油でソテーし、全体に火が入ったら、エビの頭と殻とホタテを入れてさらにソテーします。


 エビ殻の表面全体が赤色になったら強火にし、手早くブランデー・白ワイン・ブイヨンを入れ、全体が沸騰したら弱火にし、タイム、エストラゴン、白コショウを入れ、軽く塩をふり、味を引き出しながら煮詰めます。


 全体が少しトロっとしたくらいで、Bのトマトペーストを少々、生クリームを加え、弱火でさらに煮詰めます。

 クリームがトロっとしてきたら火を止め、シノワで濾して出来上がり。

 ソース・アメリケーヌは、ニューバーグソースと混同されることもありますが、ニューバーグソースはオマール海老を使うのが正式です。

 以上、ここまでが仕込み(スタンバイ)です。

【ドリアを作る】

 さて、ここからがいよいよドリアの調理です。
 まず、エビを半分に、ホタテ貝柱を1/4カットし、軽く塩をふって下味をつけます。
 手鍋で、スライスしたマッシュルームをバターでソテーし、全体にバターがなじんだら、エビ・ホタテを入れてソテーします。


 なお、エビは火が入りやすいので、エビの表面が軽く赤色になったくらいで、白ワインを加えて詰めます。

 ワインが詰まったらDのベシャメルを加え、全体を合わせながら軽く煮込み、ここで一度味見をして、塩加減を調整します。
 そしてそこに、Fのアメリケーヌを加え、ざっくり合わせます。

 これが、ドリアのベースとなるクリームソースです。

 次に、グラタン皿にバターを塗って温かいピラフを盛ります。


 その上にクリームソースを盛り、さらにその表面全体にEのモルネを塗り、パルミジャーノを表面にまんべんなくふって、オーブンで焼きます。

 ピラフもソースも温まっているので、そんなに時間はかかりません。

 表面にこんがり焼き色がついたらオーブンから出し、
 パセリアッシェをふって、出来上がり。

 ドリアは、米を使った日本生まれの料理なので、たいてい日本的な洋食にカテゴライズされますが、作り方からすると、ほとんどフランス料理です。
 一般家庭で、ドリアを作るためだけにブイヨンや各種ソースを用意するのは大変なので、これを作ろうとすると相当な手間だと思いますが、この材料と手間を考えれば、一部のホテルやレストランで法外な値段を取られるのもご理解いただけるのではないかと思います(笑)

 

 
 


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