無化調ラーメンを作る

 ラーメンオタクの間では高い評価を受ける「無化調ラーメン」。
 ようは、化学調味料を使っていないラーメンのことです。

 化学調味料の是非はともかく、実は無化調ラーメンなんて、自宅で非常に簡単に、しかもそれなりのレベルのものが作れるので、作り方をご紹介します。

【材料(鶏塩らーめん)】
 ・出汁用昆布 適量(安いものなら多めに。上等な羅臼とかなら1枚程度でもOK)    

 ・鶏の手羽元 1キロ程度(解凍品でないもの)
 ・にんにく  3〜4片
 ・長ネギ   1本
 ・たまねぎ  1/2個

 ・しょうが  適量
 ・日本酒   適量
 ・こしょう  適量
 ・塩     適量

【作り方】
 @鶏は洗っておく(表面の匂いを取る)
 A野菜類は適当な大きさにカットする

 B鍋に昆布を入れ、たっぷりのぬるまゆにつけて5〜8時間程度おく
 C弱〜中火で沸かし、沸騰直前に昆布を取り出す
 D日本酒を加え、塩以外の全ての材料を入れて沸かす
  ※この時の水分量は、全ての食材は水に沈めて少し多めくらい
 E沸騰しかけたら火を弱火にし、アクを取りながら1時間程度煮る
 F材料をザルで漉す
  ⇒スープベースのできあがり。
   塩は自分の好みの塩加減に入れる

 以上、たったこれだけです。

 「こんなんで美味しいのかよ!?」

 と思われるかも知れませんが、作ってみれば分かることでしょう。
 濃厚な鶏だしのスープが出来上がります。
 上の材料でラーメン2杯分くらいです。
 もし味が薄いと思ったら、材料を漉した後の汁を煮詰めて濃縮すればいいだけです。

 ただ、天然の旨味というのは、塩を入れることでその旨味が力を発揮します。
 塩を入れる前の味で判断せず、スープをお椀などに少しとって、塩を入れてみて、味を確認してください。
 (慣れれば塩なしの状態でも出汁の濃度を判断できるようになります)

 この作り方を見て、「鶏ガラやモミジを入れないで美味しいのかよ?」「鶏油は?」といった突っ込みを入れたい人がいるかも知れませんが、基本の鶏塩ラーメンスープとしては、十分すぎるくらい旨いスープになります。

 なぜ、こんな簡単で美味しものが作れるかというと、簡単なことです。

 「手羽元」という、食用部位を使って作っているからです。

 ラーメンのスープ作りって、実はちょっとしたパラドックスがあって、美味しいラーメンを作るには、厳選素材を使って手間暇かけないといけないと思われていますが、それは「ラーメン屋」として営業することを前提としているからそうなるのであって、自宅で材料費を気にせず作るなら、無化調でも濃厚なスープが簡単に作れるのです。

 ラーメン屋が鶏ガラを使う一番の理由は、材料費を抑えるためなのです。
 肉の部分(イノシン酸)と骨髄部分(グルタミン酸)では旨味が違うので、鶏ガラには肉だけでは出せない旨味が引き出せますが、手羽元なら同じ旨味を備えていますし、肉の部分に旨味をたっぷり含んでいて、ゼラチン質もたっぷり含まれているので、むしろ鶏ガラよりも簡単に濃厚でなめらかなスープが作れます。

 素材としては非常に優秀な手羽元ですが、ラーメン屋で出汁用に使ったりしたら、材料費が大変なことになってしまいます。
 決してラーメン屋が不勉強なわけでも、無駄にこだわっているわけではありません。
 そもそもラーメンというのは、高いラーメンでも一杯800円台には抑えないといけない、暗黙の縛りのような空気があります。
 その限られた値段の中で、限られた手間の中で美味しくするために、あの手この手と工夫をしているのです。

 これがフランス料理のフォンドボー(仔牛の出汁)となると、そもそも牛肉自体が高いし、それも仔牛となるとさらに高級素材で、野菜も西洋エシャロットやリーキなどなかなか手に入らず高価な食材も使うので、家庭で簡単に真似できません。

 しかし、鶏となれば、どの部位もさして高くないので、ラーメン屋で1杯700円のこだわりラーメンを食べる出費を考えたら、自宅で手羽元を使ってラーメンを作るなんて、むしろ安上がりな話なのです。
 しかも、スープを取り終えた後の手羽元も、野菜も、塩こしょうすれば美味しく食べられるので、無駄も出ません。

 鶏油が不要なのも、手羽元には多少なりと皮がついていて、そこから鶏の脂が溶け出すので、別に用意する必要がないのです。

 こうして作ったスープは、そのへんにある鶏スープをウリにしている人気ラーメン店と比べても、劣らないレベルの濃厚な無化調スープだと思います。

 この基本の味が分かれば、あとはどう風味や旨味に複雑性や好みのテイストを加えるかです。

 世間のラーメン屋では、塩ラーメンといっても、塩だれを入れている店がほとんどで、白醤油が入っている店も少なくありません。
 もちろん入れたければ入れれば良いし、もちろん醤油ラーメンにしても、味噌ラーメンにしても美味しくなりますが、このへんは好みです。

 鰹やにぼしといった魚介は入れなくて良いのか? と思う人もいると思いますが、これも好みです。
 たとえば、鰹や煮干しの旨味の主体は、イノシン酸です。
 通常、ガラや骨だけだと、イノシン酸が不足するので、そうした節系の素材で旨味を補うわけです。

 昆布の旨味が不十分だと思ったなら、アンチョビを入れるのも手です。
 醤油やナンプラーも、グルタミン酸が豊富です。

 よく、ラーメンダレはラーメン屋の命だとかいいますが、化学的に考えれば、単にスープだけでは足りない旨味や風味をプラスしたり、特長を出することが目的です。
 スープを何種類も用意するのは大変なので、ベースのスープは一種類で、タレに変化をつけることで、醤油ラーメンにしたり、味噌ラーメンにしたり変化させられます。
 醤油ラーメンの醤油だれは、グルタミン酸の強化と醤油の酸味、みりんや砂糖の甘味、そして何より、醤油特有の香りを出すことが大きな役割です。タレの作り方次第で、ラーメンの個性が決まります。

 ネギやにんにく、しょうがは、香りです。(ネギには旨味もあります)
 
たまねぎを入れるのは、甘味を加えるためです。
 日本酒を入れるのは、肉の臭み取りとともに、酸味を加えるためです。
 人間は、ほどよく酸味があるほうが、旨味を感じやすくなるからです。
 (鰹出汁やしょうゆには酸味があります)

 上記は基本の素材ですが、しょうがが弱い方がいい、にんにくが強い方がいい、などは好みです。
 旨味的には鶏だけでも十分旨くなりますが、やはり日本人的には、鰹や節系の和風だしの風味もある方がより美味しく感じるので、入れなくていいというわけではありません。
 結局は好みですが、鰹出汁だって、家庭で作るのがそんなに大変なものではないでしょう。

 ですが、実はこれがラーメン屋となると、逆に大変なんですよね。
 普通は、飲食店で大量に作った方が効率よく作れそうなのに、ことラーメンとなると、特に現代人のラーメンに対する高い要求に応えようと思うと、非常に大変なのです。

 家庭で、2〜3人前くらいを作るだけなら、鶏スープと和風だしを別々につくって合わせるなんて、大した作業ではありません。
 しかし、お店の大寸胴で大量に作るとなると、食材によって適切な温度・煮出し時間はバラバラだから、別々に作るのも手間がかかるし場所もとるし、お湯が沸くまでだって時間がかかるし、沸いてから鶏ガラから味を取るのに1時間というわけにもいかず、丁寧に作ろうとするならあく取りもかかりきりになるし、相当な手間と時間がかかります。

 自然な味のラーメンを食べたいと思った方は、一度トライしてみてください。
 きっと、ラーメンへの見方が概念が変わると思います。

 

 

 


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