きのこは春がおすすめ

 キノコ類というと、誰もが「秋が旬」とイメージすることでしょう。
 
でも本来は、春も旬なのです。

 キノコは菌から育ち増すが、それが一番活性化するのが、20度くらいの気温で適度に湿度がある状態だそうです。
 となれば、秋はもちろん、春も同じような条件になるので、きのこが育つのは当然です。

 ただそもそも、フレッシュな茸は、松茸を除くと、「天然のきのこ」自体が流通することはまずありません。
 なぜなら、天然の茸は稀少で、収穫が大変だからです。

 高級な茸というと「松茸」ばかりが有名ですが、しめじでも、マイタケでも、椎茸でも、天然は松茸と同レベルかそれ以上に高級素材です。
 では、一般のスーパーに出回っているキノコたちは何なのかというと、ほとんど
が「菌床栽培」といって、きのこの菌を「培地」と呼ばれるスポンジのようなものに植え付けて、工場のような施設で短期間に大量栽培して流通しているものなのです。
 ほとんど以外には何があるかというと、椎茸の中には「原木しいたけ」と呼ばれるものがあり、これは木に菌を植え付けて育てるやり方で、この手法だと天然に近い味が生み出せますが、育てるのに2年かかるので高価になり、フレッシュで入手できる茸となると、あとは天然の松茸か、輸入のポルチーニくらいでしょう。

 松茸だけが天然なのは、菌床栽培がいまだに成功していないため、天然でしか調達できないので、非常に高価になるのです。
 マイタケやしめじで天然ものが出回らないのは、単に菌床栽培で安定して安価に入手できるためです。天然のほうが味が良いとされていますが、松茸同様手作業の収穫になるし、類似毒茸と誤認するリスクもあるので、基本的に流通しません。

 また、菌床栽培でもメーカーによって様々な品種研究・改良がされていて、特長が異なるのも面白いです。
 
特にわかりやすいのが舞茸で、雪国まいたけ・ホクト・一正蒲鉾の3社が舞茸栽培のビッグ3ですが、雪国は風味・旨味のバランス型、ホクトは旨味を強めて風味はクセをなくして食べやすく、一正は天然を目指して風味のクセ強めと、3社個性が明らかに違います。
 どれが良いとは一概には言いがたく、
個人的にはどうせ舞茸を使うなら個性のある一正が好きですが、特有のキノコ臭を嫌う人もいるので、好みというところでしょう。

 そんなわけで、主要なキノコ類は菌床栽培によって通年安定流通しているのですが、「キノコといえば秋」というイメージと鍋需要の増加もあって、秋冬はキノコ類の相場が上昇傾向にあります。
 また、先ほども書いたように、キノコ類の最適温度は20度くらいなので、夏・冬はエアコンのエネルギーコストがかかるのに対して、春は本来の旬で自然な温度で育つので、生産コスト的にも非常に有利であるにもかかわらず、春が旬という認知がないため売れないらしく、相場が下がり安くなります。
 だから、春にキノコを使うのが、実は季節感もあってコスト的にもお得、というわけです。

 なお、「香り松茸、味しめじ」という言葉がありますが、ここで指すしめじは安いぶなしめじのことではなく、「本しめじ」と呼ばれるしめじで、品種が異なります。こちらも菌床栽培されてますが、ぶなしめじより高値です。

 西洋料理ではポルチーニ(セップ茸)やジロール茸などよく使われますが、フレッシュとなると日本ではなかなか手に入りません。
 近年、ホクトさんがポルチーニの菌床栽培に成功されたというニュースがありましたが、量産化の見通しは立ってないらしく、流通するようになるかはまだわかりませが、非常に期待しているところです。

 


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