イカ墨のスパゲッティ今ではスーパーのレトルト商品にもなっているのほど、日本でも一般的になったイカ墨のスパゲッティ。
ヴェネチアの郷土料理です。その存在を知ったのは、子供の頃に読んだ「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画の中で、主人公が食べて絶賛しているシーンからです。
作り方は、ものすごく大雑把にいうと、イカを具にしたニンニクとトマトのパスタにイカの墨をぶちこんだもの。
漫画では具体的にどんな料理かは書かれていなかったので、一体どんな料理なのか一度食べてみたいものだと思いながら、初めて食べたのが高校生の時。
「ryu-ryu」というパスタの店で発見して注文し、その何とも言えない独特の美味しさに感激したものです。それで、当時はレトルト商品もなく、イカ墨ペーストなどという便利なものも手に入らなかったので、高校生当時、新鮮そうなイカを丸ごと一杯買って、家で何とか作れないか挑戦しました。
インターネットなんて便利なものもない時代、作り方も知らずにとりあえずイカを買ってみた無謀さは高校生ならではでしょう(笑)
その時買ったのはスルメイカ。
母からイカの捌き方を教わりながら、とりあえずばらしてみたら、墨がほとんど入っていない。
「あれ?これだけ?」と思いながらも、とりあえず、身を細切りにしてスタンバイする。しかし、そもそもあの真っ黒な濃厚なソースがどうやって作られるのかわからず、とりあえずオリーブオイルでニンニクとタマネギと鷹の爪とイカを炒めてみることに。鷹の爪を入れたのは、ryu-ryuのイカ墨パスタが結構辛かったから。
スルメイカには立派な肝が入っていますが、これもどうしたものかと母に聞いてみたら、「入れた方が美味しいんじゃない?」と言われて、入れてみる。
白ワインでソースを伸ばし、ちょろっと入っていた墨袋を投入すると、若干黒くはなりました。そこに茹でたスパゲッティを投入し、和えて食べてみたら…なかなか美味い!!
材料からしたら、それなりに美味しくなるのは当然ですね。
ただ、イカ墨の量が少なく、店で食べた時のイメージとは違い、どちらかと言うとイカ墨風味のペペロンチーノ。で、実際のイカ墨のパスタはどうやって作るかというと、もっぱらコウイカを使います。
墨が沢山入っているので、スミイカとも呼ばれます。
新鮮なコウイカを、胴体と耳と肝と墨と足にばらし、余分な部分を捨てる。
墨袋を破かないよう扱うのがポイントです。オリーブオイルでニンニクと鷹の爪を炒め、良い感じの色になったら肝と墨を投入し、白ワイン。
そこに細切りにしたイカとトマトソース(トマトペースト)を加えて詰めて、茹で上がったパスタと和えるだけ。
イカ墨のスパゲッティ(調理:管理者)意外とシンプルなわりに、個性的で美味しい!
イカ墨のパスタが何故美味しいかというと、イカの墨にはアミノ酸(旨味)が多量に含まれているからです。ただの視覚効果ではありません。また、イカの身では感じない独特の海の香りがあり、他の魚介料理にはない独特の風味を生み出します。
ちなみに、イカ墨を使った日本の料理はあまり知られていませんが、漁師さんなんかは当たり前に食べてるみたいですね。
以前、徳島の漁師町で漁師体験をさせてもらったことがあるのですが、そこでは商品にならないような小さなイカを、そのまま丸ごと煮込んで惣菜にして食べられていました。
当然、小イカといえども墨を持っているので、そのままぶちこめば鍋は真っ黒になりますが、それがそのままソース代わりになっているというわけです。
洗練さはありませんが、いかにも田舎料理的な、素朴な美味しさでした。その時、大量のイカの子供をもらったので、家に帰ってニンニクで炒めでワインで煮込んだら、勝手にイカ墨ソースみたいになったので、そこにトマトソースを加えてパスタを投入したら、立派なイカ墨のパスタになりました。
本来の郷土料理ってそんなものですよね。僕はシンプルに作るのが好きで、余計な具は入れず、特におろしたてのイカで作る時はあまり沸かし過ぎると鮮烈な香りが飛んでしまうので、短時間で仕上げています。いかにも田舎料理的な、素朴な味です。
ただ、トマトは水分が多いと味がぼやけてしまうので、トマトソースだけ先に別に煮詰めておくのがポイントです。料理としての味わい・風味を洗練させていくなら、ハーブを加えたり、アンチョビを加えたり、貝の出汁を加えたり、ドライトマトなんかを加えると、もっと厚みのある味になるでしょう。
このへんは好みですね。
ゲソを入れても良いのですが、ゲソは味が濃いものの、どんなに新鮮なものでも加熱するとゲソ特有のクセのある風味が強くなり、僕はそれがあまり好きではないので、別の料理にして食べます。
「イカはゲソの方が好き」という人もいるので、好みだとは思いますが、胴体だけのほうが上品な風味に仕上がると思います。