パスタの雑学・スパゲッティとは?

 
 麺類大好き日本人には、もはや日常食に近い「パスタ」。
 ここでは、百科事典的なパスタの話から、調理の視点で見たパスタの雑学などを書いてみます。

●スパゲッティとは?

 日本人にとって、「パスタ」と聞いて一番に想像するのはスパゲッティでしょう。
 でも、意外と正しい「スパゲッティ」のことは知られていません。

 日本では「パスタ」と「スパゲッティ」が同義語のように扱われることがありますが、「スパゲッティ」はあくまで「パスタ」の一種で、形状によって、マカロニ、タリアテッレ、ラザニア、ファルファッレなど、色々と名前が変わります。その中で「スパゲッティ」は、細長い蕎麦状のパスタを指し、それも正確には、1.7mm〜2.0mmくらいの太さの麺のことを言います。

 2.0mmより太くなるとスパゲットーニ(spaghettoni)、1.4mm〜1.6mmはスパゲッティーニ(spaghettini)、1.4m以下はフェデリーニ(fedelini)、1.0mm以下はカペリーニ(capellini)と、太さによって名前が違います。

 日本でも人気のあるディ・チェコの包装をよく見ると、1.6mmのものには"spaghettini"と書かれていて、"spaghetti"と書かれているのは、2.0mmのものです。
 日本では1.6mmが一番の売れ筋らしいので、日本人がよく食べているのは、正確にはスパゲッティではなく、スパゲッティーニ、ということになりますね。

 日本で言うと、「うどん」「ひやむぎ」「そうめん」のようなものでしょう。JAS規格では、1.7mm以上のものを「うどん」、1.3mm〜1.7mmのものを「ひやむぎ」、1.3mm以下のものを「そうめん」と、ちゃんと分けらています。

 日本人でもmm単位で認識している人は少ないと思いますが、「うどん」を注文して、細いひやむぎや極細のそうめんが出てきたら、感覚的に「えっ?」と思いませんか?
 
もし、外国の食品スーパーに行って、包装袋にはちゃんと日本語で「そうめん」と書いてあるのに、英語の商品カードには"UDON"と書かれてあったら、「外国では扱いがいい加減だな〜」と、日本人なら思うことでしょう。

 パスタはそのイタリア版と言えるかもしれません。
 蕎麦状のパスタだからといって、何でも「スパゲッティ」と言うのは、イージー過ぎるかも知れません。

 もっとも、本場イタリアでも、1.6mm〜1.8mmあたりをスパゲッティとスパゲッティーニで細かく区別するかは、アバウトなようです。
 でも、フェデリーニやカッペリーニまでくるとやっぱり別物で、このへんは、日本のファミレスでもきちんと区別されているように思います。

 うまけりゃどうでもいい、と言ってしまえばそれで終わりですが、「麺好き」の日本人は、ラーメンでもうどんでもパスタでも、麺の太さの好みは結構うるさいので、レストランのメニューでもスパゲッティとかスパゲッティーニとか使い分けたほうが、お客さんにとってはわかりやすいんじゃないか…?と思ったりします。

●乾麺と生麺

 日本でパスタを食べる場合、店でも家庭でも乾麺を使用することが圧倒的に多いので、本場イタリアのパスタでは「乾麺」の位置づけってどうなんだろう?という話がよく出てきます。

 日本では、うんどでも蕎麦でもラーメンでも、麺類の専門店なら生麺が当たり前です。
 家庭ですら蕎麦以外は生麺が主流なので、「乾麺」というとインスタント的なイメージがあり、イタリアの本場のレストランなら、パスタも生が当たり前?と想像したくなるところです。

 しかし、結論から言うと、イタリアでは高級店でも乾麺が一般的に使用されています。
 ただ、地域差があり、南イタリアでは乾麺が多く、北へ移って行くと、生麺が主流になり、乾麺の使用頻度が下がるようです。

 これは、乾麺はもともと南イタリアのナポリ生まれだからです。
 暖かくて食材保管が難しかった南部のイタリアでは、パスタを乾燥させて保存するパスタ文化が発達し、一方、涼しい北部では、卵を使った生パスタの文化が発達したのです。

 その食文化が今でも継承され、ローマやナポリといった南イタリアではツルツルシコシコした乾麺のパスタがスタンダードとして愛され、ベネチアやミラノといった北イタリアではモッチリした生パスタがスタンダードとして愛されているそうです。

 保存技術が発達した今日では、生パスタがどこでも盛んに作られていますが、それでも南イタリアでは乾麺がよく食されているようです。
 一方、北イタリアのミラノのレストランなんかに行くと、だいたいその店その店の自慢の手打ちパスタがあり、中でも「タリオーニ」という、細くて平打ちのパスタがよく出されます。

 乾麺は最初は生麺の保存方法として生まれましたが、今では独自のアイデンティティを持って発展した食文化であり、生麺のパスタとは味わいも楽しみ方も違います。
 なので、どちらが本物だとか考えずに、別の食べ物と考えて、それぞれの良さを味わうのが楽しい食べ方だと思います。

●色々なパスタ

 日本で昔からよく知られているパスタは、スパゲッティとマカロニでしょう。
 マカロニは、筒状の細長いパスタで、日本では1cm〜3cmくらいの短いものをよく見かけますが、本来はスパゲッティのようなロングパスタで、料理に応じて折って使用します。

 また、筒状のパスタでも、ナナメにカットしたペン先状のものは「ペンネ」、直径が大きくて表面に筋の模様をつけたものは「リガトーニ」と言い、日本では代表的なショートパスタです。

 細長い蕎麦状のパスタでも、楕円に仕上げたものは「リングイネ」、真ん中に小さな穴の開いたものは「ブガティーニ」、幅広のきしめんのような形状になると「フェットチーネ」や「タリアテッレ」、海苔のような板状の「ラザニア」、ネジのような螺旋型の「フジッリ」、リボン状の「ファルファッレ」、餃子のように中に具を包んだ「ラヴィオリ」…などなど、パスタには数えきれないほどの種類があります。

 パスタ好きの人なら、上記のパスタの種類くらいはだいたいご存知かもしれませんが、イタリアに行くと、日本では聞いたことのないようなパスタが、数えきれないほどあります。

 同じソースでも、パスタの種類を変えただけで味わいが大きく変わるので、いつも同じスパゲッティを食べている人は、たまには趣向を変えて色々なパスタ試してみるのも面白いでしょう。

    


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