カレーライスのルー日本では、「カレーのルー(ルゥ)」という言葉がよく使われます。
レストランでも、カレーライスを注文されて、カレー部分を多くしたい場合、「ルー大盛り出来ますか?」と言われたりします。ですが、本来の料理用語としては、カレーのことを「ルー」と言うのは間違いで、インド料理的に言えば、カレー部分は「カレー」そのものであり、洋食の世界では「カレーソース」と言います。
もっとも、インドには「カレー」という料理自体存在せず、イギリス人がインドの料理をそう呼んだことから定着した呼び名らしいので、単に「カレー」と呼ぶのも微妙な話で、やはり「ソース」という表現が一番しっくりくるように思います。
●「ルー」とは
「ルー」というのは、そもそも古典フランス料理で、ソースや煮込み料理などにとろみをつけるために使う、バターと小麦粉を合わせて炒めたものの呼び名です。
そもそもインドのカレーは、とろみのないサラっとしたものが多く、日本のとろみのあるカレーは、明治時代にイギリスから伝わった、イギリス式フランス料理をルーツとする「欧風カレー」が原点です。
ドミグラスソースでもベシャメルソース(ホワイトソース)でも、古典フランス料理ではソースのとろみ付けにルーを使うので、イギリスから伝わったカレーも、肉・野菜を煮込んでカレー粉で風味をつけ、仕上げにルーでとろみをつける、という作り方でした。
●固形即席カレーの登場
そこに、カレーそのものを「ルー」と呼ぶようになったのは、ハウス食品やエスビー食品が販売した、固形のカレーの素の影響だと考えられます。
肉や野菜の旨味、カレー粉、そこに油脂分と小麦粉(つまり「ルー」)も合わせてひとかたまりにして、それを「カレーのルゥ」と称しました。完全に手作りで美味しいカレーを作るには、かなりの材料と手間がかかるので、簡単にカレーが出来上がる即席カレーは大ヒットしました。
それが定着して、いつしかカレーのソースのことを、カレーのルーと呼ぶようになったようです。レストランの世界では、カレーはソース・ポットよ呼ばれる金属の容器に入れて、ライスとは別添えで出すのが一般的なスタイルだったので、あくまでライスにかける「ソース」として、小麦粉とバターで作ったルーと区別するためにも、きちんと呼びわけていました。
カレーソースをルゥなんて言ったら、「素人みたいな呼び方すんじゃねぇ」と怒られたものです(笑)。しかし最近では、「カレーのルー」という言葉があまりにも広まっているので、今ではレストランの職場でも、カレーのルーと言うことが多くなりました。
お客さんからあまりにも「ルー」と言われることが多く、ホールスタッフもお客さんから言われるがままに「ルー多めで」とキッチンに伝えてくるので、こうなるともうルーと言ってやり取りした方が手っ取り早いからです。少し前までは、こだわる人の間で、「カレーをルーと言うのは誤り」という話が出たものですが、今や辞典にも「ルー」の説明として、「カレーやシチューの素」という記述があるくらい、日本語として市民権を得たようなので、今となってはこだわる必要はないかも知れません。