「豊洲直送」は美味いのかよく飲食店で「豊洲直送」といった文言を掲げているお店があるけど、それって「美味しい」ことの根拠になるの? 少なくとも「素材は良い」と思っていいの!? と思われている方もいるのではないでしょうか。(表示自体には嘘偽りがないという前提で)
業界人としてその答えを言うと、
「豊洲市場には日本中から素晴らしい素材が集まっている」
「ただし豊洲市場にある素材全てが高品質とは限らない」ということになります。
まず大前提として、豊洲には、魚でも野菜でも、素晴らしいものが集まってることは間違いありません。
理由は簡単で、欲しいと思っている人がいて、高い値段でも売れるから、です。特に魚は、地方の漁場で素晴らしい魚があがっても、地元では売らず、多くのものが豊洲や大阪の本場に送られます。
特に大型の高級魚となると、地方では使い切れる店自体が少なく、高級店も乏しいため、買い手がつかず、少なくとも高値はつけられないからです。
その点豊洲のある東京には、高級店が数え切れないほどあり、それも超高級店も多いので、高くても良いから品質の高い物を、というお客さんが沢山いるので、そっちに送ったほうが商売になるわけです。
だから日本全国から最高の食材が豊洲に集まってくるのです。越前の蟹のように、鮮度が極度に繊細な素材の場合は、地元でしか最高の状態のものは食べられないとか、夕張メロンのように地元需要が高すぎて豊洲でも多く出回らない、といった素材もありますが、豊洲にはだいたいの高級素材が揃います。
野菜の場合は、豊洲に送るといっても良い物はだいたい相対(売り先が決まっている取引)で、市場には余ったものしか出回らなかったりしますが、いずれにしろ豊洲なら仲卸経由で高品質な素材を入手することができます。
そんなわけで豊洲から高品質なものをひくことは出来るのですが、といって豊洲にあるもの全てが高品質なものばかりというわけでもないし、最高鮮度のものしか置いてないわけではありません。
通常流通している魚や野菜は、そのへんのスーパーと変わらないし、安いものだってあるし、いわゆる留めモノ(売れ残り)だってあります。
なので、「豊洲直送」であっても、廉価な流通品や留めモノを安く買いたたいていたのなら、当然ながら高品質な素材を使っていることの根拠にはなりえません。というわけで、結論としては「豊洲直送」という言葉だけでは、素材が良いかどうかはわからないということになります。