料理用ワイン

 料理用のワインについて、辛口がいいのか、甘口じゃダメなのか?
 という質問がよくありますが、結論からいうと、料理次第ではどれもありです。

 ですが、通常の料理には、辛口ワインを使います。
 なぜなら、料理にワインを加える目的は「酸味」の役割が大きく、余計な甘味をつけないためです。

 パスタやソースにワインを使うと、味が良くなります。
 それが良質なワインだと、味わいは確実に増します。

 ワインの料理への影響についての科学的な研究は昔からあり、諸論ありますが、一番大きいのは「酸味」。次に、ワインに含まれる様々な果実味と成分で生まれる滋味。
 そして最後に、素材の臭みを取る効果や、風味付けです。

 なので、料理に的したワインは、酸味の輪郭があって、味わいに厚みのある、水っぽくない辛口ワイン。
 そうしたワインを使うと、料理の味に厚みが出ます。

 なぜ料理にワインで酸味を加えるかというと、人間は、ほどよい酸味のあるものを美味しいと感じるからです。

 科学的にはそれを「PH」という0〜14の値で表し、7を中性として、値が高いほどアルカリ性、低いほど酸性で、ヒトが美味しいと感じるには、少し酸味のある5のあたり。(厳密には味覚的に感じる酸っぱさとPHのレベルは必ずしも一致しませんが、目安として)

 ラーメンに酢を入れるのが好きな人がいると思いますが、特に途中から入れると美味しくなると感じる人は少なくないと思います。
 これは、時間とともに中華麺のかんすいがスープに溶けて、スープがアルカリ性に近付くからです。
 だから、途中で酢を入れることでPHが下がり、再び美味しくなったように感じるわけです。

 パスタ料理などでは、具を炒めたら白ワインを加えますが、そうすることで、具材の味をワインに染み出させてソースにするとともに、料理に酸味を加えているのです。

 ワインのPHは3〜4くらいなので、火にかけてアルコールを飛ばしながら煮詰めることで、ちょうど良い酸味が残り、ワインの持つ果実味も凝縮されます。
 これが、味気なく水っぽいワインだと、PHを下げる効果が薄く、ソースのコクもでません。
 ただ、あまり酸味の強すぎるワインだと、酸っぱさが立ちすぎるので、オイルベースのパスタなどでは使わない方が無難です。

 ワインの熟成された果実味がもたらす滋味も、味わいのコクを深めます。
 なので、
安価なワインを使う場合は、チリやオーストラリアといった、安価でも味がスカスカじゃないワインを選びましょう。
 特に、ソースの仕上げに使うような場合は、ワインの味の密度がそのままソースの味に出るので、どんなワインを使うかでの味への影響度は大きくなります。

 とはいえ、火にかけると風味の繊細さや複雑さはわからなくなるので、高級ワインを使うのはもったいないと思います。
 大衆料理なら、フロンテラやアルパカで十分だと思います。フランジアは安いけどあまりに味がスカスカなのでおすすめしません。

 PHを下げるという点では、もともと酸味と風味がしっかりしたトマトソースのパスタなどでは、仕上げにワインを少量加えたところで、味わい効果は出にくいでしょう。
 
酸味の弱まった完熟トマトソースなら、ワインの酸味を加えるのは有効です。
 もともと
酸味の強いトマトで作ったソースの場合、甘口ワインを使うことで、逆に酸味をやわらげて味のバランスを良くする、といった使い方もあります。

 オイルベースの魚介系パスタのような料理の場合、ワインが風味を与え、具の臭みも中和するので、ワインの役割は大きく、ワイン自体の味の性格の影響も大きくなります。

 なお、赤ワインは、白と違ってタンニンと言う成分が多く、煮詰めると渋みのようなものが立ってくるので、素材型のシンプルな料理には向かず、肉やハーブをふんだんに使った煮込み料理などに向いています。また、ワインには肉をやわらかくする効果もあります。
 特にトマトをあまり使わない牛テールや牛すじの煮込みといった場合は、ガツンと酸味のきいた赤ワインをたっぷり使うと、良い感じの味に仕上がります。(好みにもよりますが)



 


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