ブラックバイト

 最近、「ブラック企業」に続いて、「ブラックバイト」なる言葉が流行っています。
 
「ブラック企業」となると、飲食業界にブラック率が高いことは、紛れもない事実でしょう。
 
ただ、「ブラックバイト」の場合は、テーマパークのスタッフ、小売りや塾講師なども、よくある事例として挙げられています。

 しかし、こうした、何でもかんでも「労働者保護」が正義のような最近の風潮は、甚だ疑問です。

 もちろん、

 「休憩時間がない」
 「サービス残業させられる」
 「パワハラ・セクハラがひどい」
 「ノルマをこなさないと自腹」

といった、明らかにアウトローな職場は、問題外です。

 「休みたいと言ったら代わりを探せと言われた」

ということについては、別の記事で書いたので、ここでは書きません。

 ただ、某テーマパークのように、「バイトなのに責任が重い」とか、華やかな仕事を任されるためには、時間外にも勉強しなきゃついていけない、などあれこれ書かれていることについては、

 「好きでそこを選んじゃんじゃないの?」

と思う部分があります。

 それを、アルバイトなら「自分の好きなことだけやれる」というものと、勘違いしてないでしょうか?

 「バイトなのに社員のような責任」

という言葉がありますが、「勤務時間内の業務責任」には、社員もバイトもあまり関係ないのではないでしょうか…?
 そもそも、法的には、社員とアルバイトでは、身分や責任の違いなんて一切ありません。
 端的に言えば、月給制のフルタイマーか、時間給制のパートタイマーかの違いだけです。

 ただ、月給で固定給が保証され、ボーナスや福利厚生があるから、「業務範囲が広い」、時給制で単価が安くなる分、業務内容が限定的で、時間を選べるだけのこと。

 飲食なら、食中毒を起こしちゃいけないし。
 引っ越しなら、物を壊しちゃいけないし。

 それが嫌なら、その職場を選ぶべきではないでしょう。
 バイトといえど、任されている仕事に責任が生じるのは、当然でしょう。

 もちろん、安い時給のバイトなのに、店長のような管理責任を負わされてるとかは「ブラック」です。
 販売系のノルマがあるとか、ミスをしたら罰金、というような職場も「ブラック」です。

 しかし、テーマパークのような職場で、自分のパフォーマンスを「より高める」ためとなれば、話は別だと思うんです。
 
業務に必要な基本的なことを覚えたり身に付けることが宿題や自主訓練だったりしたら「ブラック」ですが、自分が「より輝きたい」ための勉強なら、自己責任で、自主的にやって当然ではないでしょうか?

 そういう「仕事」を、好きで自分で選んだのではないでしょうか?
 
それとも、自分の「お勉強」時間まで、お金がもらえて当然だと思っているのでしょうか?

 それって、例えばミュージシャンや俳優が、家で楽器を練習したり演技力を高める訓練にも給料をつけてくれ、と言っているようなものではないでしょうか?

 それが「バイト」の立場だと、勉強時間でもお金を貰えないとおかしい、というのは、根拠が全く不明です。

 基本業務に関することではなく、自分が「より輝いたい」ためのことであれば、自主的にやるくらい、普通ではないでしょうか??

 そして、もう一つ意味がわからない「ブラック」の理由が、「辞めたくても辞めさせてもらえない」という部分です。

 もちろん、辞めたいのに店や会社が応じてくれず、辞める話になると無視されるとか、「ふざけんな」と言って脅されるとか、そういうのは問題外です。
 ここで問題にしたいのは、辞められない理由の中で、「自分が抜けることで仲間に迷惑をかけてしまうから辞めにくい」「辞める人が気兼ねなく辞められるよう職場側が配慮すべき」という主張です。
 これが「ブラック」の理由にあがるのが、意味不明に感じます。

 はっきりいって、それは当然ではないでしょうか?
 
そんなことは、部活やサークルでも、同じことでしょう。
 
趣味でやってる音楽のバンドだって、一人しかいないギタリストに、いきなり「辞める」と言われれば困ります。
 
チームで何かを行う団体であるなら、そこから抜けることによって、他の仲間の迷惑がかかるのは当然です。
 
チームに所属する、というのはそういうことであり、その覚悟がなければ、最初から参加すべきではありません。

 もちろん、やむを得ぬ事情によって、そのチームから抜けること自体は仕方がないことです。
 しかし、それによって発生する他の仲間への迷惑を、まるで「職場のせい」のように言うのはおかしい。

 辞めたい人がいつでも気持ちよく辞められる精神的配慮まで職場が責任を負うべきなのでしょうか?

 ギタリストに辞められたらバンド活動が困るので、残されたメンバーは他のギタリストを探すでしょうけど、それは辞めるギタリストに配慮してのことではありません。

 もし、バンドのギタリストが、

 「俺がいつでも脱退できるよう、代わりのギタリストは常時抑えておけ」
 「俺が気持ちよく脱退できねぇからギタリスト探してこい」

 なんて言ってきたとしたら、どんだけ傲慢な奴だよ! と思いませんか??

 急に辞めるのは自己都合なわけだから、それによって発生する本人の悩みの責任を、どうして他の仲間や職場が負わなければならないのでしょうか。

 自分の悩みは自己責任で解決するのが筋でしょう。

 では、気持ちよく辞めるにはどうしたら良いか?
 というと、自分で誰か後任を紹介する、というのが、一番の方法だと思います。
 ギタリストの例なら、代わりのギタリストを自分で紹介することですね。
 そうすれば円満解決です。

 僕が学生時代のバイト先では、それが当たり前のところが結構ありました。
 
明確にそうしたルールがあったわけではありませんが、サークルで代々受け継がれてるバイトなどがあって、先輩から受け継ぎ、自分が抜ける前には後輩を紹介していくような慣習で、それを「おかしい」とも思わなかったし、当時も、今も、すごく合理的な風習だったと思います。

 また、急に後任を探すのは店だって大変だから、出来る限り早めに伝えておくのが最も普通の行動でしょう。
 
そうすれば、店も代わりを探す時間があるし、お互い、辞める時にあとくされがない。

 もちろん、職場の責任者の「あるべき理想的な姿」としては、気持ちよく辞められるよう配慮する意識も大切だと思います。

 「自分が辞めたら大変じゃないですか…?」

とバイトが言ってきても、

 「大丈夫。もちろん大変だけど、何とかするから、気にすんな!」

と言ってあげたり、

 「今、バイトを急募する募集広告を入れたから」

と言ったり、既存メンバーに誰かを紹介してもらうよう動いたりして、本人に余計な気遣いをさせないようすべきだと思います。

 そうすることが、結果的に自分自身が仕事をしやすくなるし、人間関係も良くなって、既存メンバーが積極的に誰かを紹介してくれるようになったり、辞めたメンバーがまた戻ってきてくれたりします。

 でも、それは、お互いの気遣いによってはじめて成り立つものであり、それを一方的に職場側が配慮すべきだというのは、かなり極端な話だと思います。
 
雇う側も、雇われる側も、お互いに配慮しあい、それなりの責任を分かち合うのが、「人として」の常識ではないでしょう。

 たかがバイト、されどバイト。

 現在の日本経済と雇用において、事実として、アルバイトのウェイトはかなり大きくなっています。
 
その良し悪しはともかく、この「現実」に対して、日本の社会経済を良くするために問題視すべきは、職場がブラックだとか、そんなことばかりではなく、労働者としての「質」ではないでしょうか?

 バイトを甘やかして景気が良くなるならともかく、「バイト」というだけで保護されるべき弱者にように扱い、甘やかしていては、景気は良くならないように思います。(パワハラやセクハラは問題外として)

 今の日本の事実として、「アルバイト」という労働力は、社会・経済を支える重要な層であるわけですから、甘ったれたバイト君・バイトちゃんに、厳しいムチを入れ、よりレベルの高い仕事をしてもらうとする、そうしたムーブメントも必要ではないでしょうか。

 法律とか制度だとか、そうした外的な力に「守ってもらおう」とばかり考えるのではなく、より良い仕事・職場環境を実現するには、どうしたら良いか?ということを、社員もバイトも関係なく、一緒に考えていく、という意識が重要ではないでしょうか。

 マスコミも、やたらとブラックブラックと言って企業を叩くことばかりを考えず、日本の就業者の「人として」のモラル崩壊をもっと話題にすべきだと思います。

 


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