コロナウィルスと飲食店

 2020年3月現在、コロナが猛威を振るい、ついにWHOがパンデミックを宣言しました。

 そんな中、飲食店は、どうすれば良いのでしょうか?

 日本政府は、スポーツなどのイベントを自粛するよう要請していますが、その趣旨をあてはめると、実は飲食店だって、自粛しなければならない存在なのかも知れない。

 イベントだって、それで生活をしている人にとっては、中止となれば死活問題です。

 飲食店も営業を止めたら、個人や中小なんかでは資金繰りがショートしたり、日々の生活費が得られず、倒産したり、生活困窮に陥る人が出てくるでしょう。

 しかし、イベントなどを中止する意味は、そこに参加する人の自己責任では収まらず、そこで感染が広まり、そこに参加した人たちがさらに外部に広めてしまうリスクがあるからです。
 そうなると、飲食店だって同じです。
 利用者の勝手では済まされず、営業しているから、客が来てしまう。
 それなりの大きさの店だと、何十人と入り、客席数が百人を超える店だってある。
 そうなったら、小規模のイベント会場と何が違うのだろうか?

 けれど、営業を止めたら、それで生活している人は生きていけない。
 大手ならある程度の体力はあるかも知れませんが、それでも全店閉めるとなったら大変だ。

 でも、そんな中で、少しでも出来ることはなんだろう?
 と考えたら、やはり営業時間の短縮や一時休業、そしてその判断の裁量を、店のマネージャーに与えて柔軟に対応できるようにすることだと思う。

 何故なら、実は店を営業する中で、一番のリスクに晒されているのは、従業員に他ならないからです。

 お客さんが店にいる時間なんて、数十分から数時間で、その間に同じ空間にいる人間の数も限られています。
 しかし従業員は、長く居ればいるほど、それだけの時間、多くの不特定多数の人と接するわけです。

 また、コロナに限らず、ウィルスに対抗する一番の対策は、自分自身の抵抗力です。
 今や、少しでも体調が思わしくない従業員を出勤させないのは当たり前。
 ですが、個人経営ではなく、企業が運営している飲食店やコンビニといった店舗の責任者の場合、そんな簡単に休めるものではありません。

 アルバイトは休ませなければならない。
 でも、自分が休んだから営業が成り立たないので、休むわけにはいかない。
 むしろ、バイトが欠勤した分、長時間労働しなければならなくなったり、休みが潰れてしまうこともある。

 しかし、そうなったら、体力は低下し、ますますウィルスへの抵抗力が弱まってしまいます。

 だから、従業員が欠勤したり、少ない従業員での営業のため十分な準備・対応が出来ないと判断した場合は、逐次、その現場従業員の判断で、オープン時間を遅らせたり、中休みをとったり、閉店時間を早めたりといった判断をする権限を、経営者が与えるべきだと思うのです。

 僕の会社のある店で、こんなクレームがありました。
 遅い時間に入ったら、従業員が明らかにいつもより早い時間に掃除をはじめていた。
 早く帰りたいのかも知れないけれど、感じ悪い。そんなに早く帰りたいなら最初から閉店時間を早めて、そう告知すべきだ、と。

 平常時なら、言っていることは正論かも知れない。
 しかし、今は平常時ではない。

 従業員だって、今まさにコロナの危機に晒されている。
 早く帰りたいと思って、何が悪いのか??

 ただ、客としてはいつもと同じお金を払ってるんだから、いつもと変わらないサービスを受けて当然と思う心理もわかる。

 これが個人店なら、状況に合わせて店主が柔軟に判断することでしょう。
 単に売上が見込めず、ダラダラ営業したら逆に赤字になる、といった店都合の理由であったとしても、お客さんに「すんません、今日は少し早じまいしてもいいですか」なんて声をかけたり、その分ちょっと値引いたりとか、そんなやりとりも出来る。
 経営上の理由だって、コロナの損害の一つです。

 しかし、コンビニの営業時間があれだけ話題になるように、雇われの従業員にはそんな権限がありません。
 だからこうしたクレームが発生するのです。
 こうしたジレンマを解決するには、経営者が現場にそういう権限を与えるべきなのです。

 パンデミックは、自然災害と同じです。
 しかし、眼に見えて建物が崩れていたりしたら受け止めやすいけれど、ウィルスの存在は眼に見えないから、一見すると平常平然の日常にしか見えない。
 だから、人に当たり前のように平常どおりであることを要求しがちだけれど、その感覚がもうズレていると思う。
 従業員も、そしてその家族も、常に危機に晒されている状況下にあり、そうした従業員へのケアを深刻に考えることも、企業の社会的責任ではないだろうか?

 ただ、企業も営利活動だ。
 休め、閉めろと、そんな簡単にいくものではない。

 しかし、パンデミックも、いつかは収束すると思う。
 だからこそ今、飲食業界が考えなければならないことは、そうした現在の感染拡大や従業員の健康を第一に考えるとともに、コロナ収束後に、いかに売上を回復させるかだと思います。

 公式に発表される専門家の見解などでは春に収束する可能性は低いようなのが多いけれど、現在でも、南半球での発症はかなり低いようです。
 感染しているのはほとんど北半球からの帰国者や入国者らしく、ウィルス自体が飛散している可能性は低く、つまりは、インフルエンザといったウィルス同様、暖かくなれば収まる見込みが高いということ。

 もちろん、こちらが春になると今度は南半球が秋冬になり、そこで発生してそれが北半球に再び持ち込まれる可能性はあるけれど、それはまた別の話です。

 いずれにしろ、収束した後に、新たなニーズが生まれると思います。
 それは特に、旅行や、団体のパーティ・宴会です。
 何故なら、取りやめになった卒業旅行、打ち上げ、クラス会、会社の歓送迎会などの振り替え実施がたくさんあるだろうからです。

 おそらく、そうした振り替え実施のブームのようなものが生まれることでしょう。
 いや、むしろ飲食業界が、それを仕掛けていくのです。

 これはもう、社会現象のようなるかも知れません。
 だって、卒業式や入学式が取りやめになるとか、前代未聞です。
 それがこのまま何もなく終わるわけがないし、終わらせてはいけないと思うのです。

 卒業式が出来なかった人のための、特別なパーティプランや特典、そういったキャンペーンが多く生まれることでしょう。

 また、ESを重視する企業では、入社してまもなく有休の発生していない新卒社員に対して、卒業式やクラス会といった事由での特別休暇制度なんてのを設け、体力のある企業なら、参加しやすいように帰省費用の何割かを負担する、といったことを実施するところも出てくるかも知れません。

 こうした現象に対して、宴会やパーティのプロモーションをしていくことは、決してあこぎなことではなく、むしろお得で想い出になるような企画を用意することのほうが社会貢献であるように思います。

 また、イベントが中止になったことで大きな損失を受けた音楽や演劇、スポーツ団体のスポンサーになったり、クラウドファンディングを仕掛けることで、新しい結びつきやコラボ、そしてファンの創出が出来るかも知れません。
 資金繰りに行き詰った個人店や小さな飲食企業をサポートしたり協業していくことも有効でしょう。

 コロナが招いた悲劇で、もう取り返しのつかない状況になった人もいるでしょうけれど、まだ、取り返しがきく人だっている。
 3月には出来なくても、違う形での想い出作りをするチャンスだってある。

 そうした活動を通じて、お店や企業のロイヤルティが高まれば、きっと企業ブランドの向上と売上増につながると思います。

 確かにコロナの現状は大変な難局だし、そのことで今は頭が一杯になってしまうのは仕方がありませんが、同時にその先を考えてくことも大切で、それでこそ目先のことに翻弄されず、大局を見失わずにいられるのではないかと思います。


 

 


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