レインズインターナショナルが展開する「しゃぶしゃぶ温野菜」のFC加盟会社、DEW
JAPANが運営する某店で、アルバイトの大学生が4ヵ月連続勤務というありえない激務を強いられ、その上に給料の未払い、脅迫など、様々なパワハラを受けて鬱病になってしまったため、労働組合「ブラックバイトユニオン」を通じて、
損害賠償を求める事件がニュースになりました。
全く、こんなくだらないことをする会社があるから、ますます飲食業界のブラックイメージが上がり、採用難になり、人手不足になって、従業員の労働環境が悪化するという、負のスパイラスが発生するわけです。
もちろん、現象的には、店長が悪いわけですが、会社もほぼ同等の責任がありますよ。間違いなく。
法的にどうのというのではなくて、そこにある「実態」としては。
実行犯である店長が一番悪いとはいえ、「店長個人」の問題にしたところで、諸悪の根源である経営の本部をどうにかしないと、こういう事件はなくならないでしょう。
脅迫やパワハラ発言などは、個人の人間性による部分もあるでしょう。
しかし、そもそも異常すぎる労働環境に元凶があり、それは経営側の方針がひきおこしている可能性が、
非常に高いと思います。
何故なら、バイトがこれだけ激務なくらいですから、店長も同等かそれ以上、間違いなく働いています。
でも、そんな過酷な勤務を好んでやる人間なんて、いるわけがありません。
つまり、某牛丼店の凶悪な生産性管理のように、おそらく、しゃぶしゃぶ温野菜も、利益確保のために、会社から無理な人員制限をかけられ、業務が過酷になって従業員が辞めていき、店長の労働環境が異常になり、店長の精神が病み、従業員への要求が常軌を逸脱するようになり、結果、こういう現象を引き起こしたのではないか、と思います。
早い話が、そもそも本部が作った、飲食店としてのフォーマットがおかしいわけです。
はっきりいって、こんな店、というか、そのような収支構造を前提としたチェーン店は、社会に存在してはいけないと思います。
もはや「反社会勢力」と言ってもいいと思います。
労働環境だけなら内的問題と思われそうですが、こんな異常な環境で営業してるくらいだから、食品衛生管理だって、怪しい可能性が高い。
いつ食品事故が起きてもおかしくないかも知れません。
だから、社会的に害のある存在と言えなくもない。
チェーン店は、本当にこういう状況に陥りやすい。
個人経営の店は、まだ全て自己判断でやれるから、従業員が労働環境によって精神崩壊するようなことは、意外と発生しません。
人員不足だったり、心身に無理がくれば、臨時休業でもすればいいからです。
メニュー制限したり、閉店時間を早めたってもいい。
そもそも、個人店は定休日がある店がほとんどなので、何十日も休み無しなんてことは発生しません。
もちろん、個人店の場合は、利益が出なければ生活できなくなるので、別の形で心が病むことはありますが…
しかし、チェーン店の雇われ店長には、そういうことを行う権限がありません。
固定の営業時間・固定メニューが大原則で、店長判断で、勝手なことが出来ません。
また、本部だけでなく、お客さんの目も異常に厳しい。
チェーン店は、何かがちょっと違っただけで、すぐにクレームになりますから。
閉店時間を数分早めただけでも、お客さんから本部にクレームが入ったりします。
当然、臨時休業とか、あり得ません。
だから、チェーン店の雇われ店長は、決められた営業時間を守らざるを得ないために、こういった異常な労働環境が発生します。
でも、これって、異常な世界だと思います。
解決方法は、そんな過酷な勤務をしなければ収支が成立たない店は、「店を閉める」に尽きます。
飲食業が、真の「産業」となるには、そういう、前時代的な経営は恥ずべきものと考え、経営者が「進歩的な社会にしよう」という、理想(とうより常識?)を持つしかないでしょう。
日本もかつては、あるゆる産業が、蟹工船・野麦峠だった状況から、進歩して今日に至ったわけです。
今でも、事務仕事だって、工場だって、奴隷のように働かせれば、人件費が下がって利益は増えますよ。
でも、「まともな企業」は、決算が赤字になったって、日曜休みは当たり前だし、盆と正月は休業するし、そういうものだと思ってます。
でも、飲食の世界は、いまだにそれが当たり前じゃないんです。
さらに飲食業界の厄介なのは、もしどこかの企業が、真っ当な経営を志して、新しい業態を成功させたとしても、すぐ「マルチの親玉的気質」の経営者が、メニューやスタイルを丸パクリし、例によって労働者をこき使う手法で、人件費や管理費を非常識に抑えることで、パクリ元の店よりも安くて年中無休、みたいな店をオープンさせるから、また市場が乱れて、足をひっぱられるわけです。
牛丼チェーンが、まさにその例ですよね。
昔からあった某牛丼チェーン店は、決して無理な廉価販売をしていたわけではないのに、そこに後発の牛丼屋が、非人道的な経営で牛丼を激安販売し、価格破壊して業界の単価水準を不当に引き下げ、結果的に牛丼市場そのものをおかしくしてしまったわけです。
最近も、「牛丼は300円以下で食べるもの」、と考えている層がいるなんて記事がありましたが、そもそも誰がそんな価格の基準を作ったのか??
店内での調理とサービスを含めて商品となる飲食では、実質的に人件費は原価(材料費)の一部のようなものです。
だから、その原価を割り込んだ価格での廉価販売は、実質的に、独占禁止法の「不当廉売」に近いと思います。
ただ、消費者にとっての利害を主眼におく同法では、従業員の労働環境なんてどうでもいいので、その対象とはなりませんが…
かつてビール業界では、相場が下がり過ぎないよう、企業間で価格を談合してたことが問題になりましたが、そこまでやるのは問題だとしても、人件費的に原価割れしているような値付けは、業界人の良識として、すべきではない。
もし、これまでの飲食の経営者がみんなそう思っていたら、飲食業界が今みたいな異常な労働環境には
なっていなかったと思います。
でも、経営者自身が体を張るわけではなく、過酷な思いをしているのは店舗の従業員だけなので、平気でやれてしまうんでしょうね…
こうなると、いっそ、国が、「商店の年中無休営業禁止法案」でも作って欲しいものです。
他力本願な解決策ですが、それくらい、飲食業界の劣悪な労働環境は、根が深い問題です。