相席居酒屋でタダ飯食い

 相席居酒屋で毎日タダ飯を食べ歩いていた女性が、ある日、おかわりをしようとしたら、店から退店させられた、という話がネットに出ていました。(相席居酒屋は、会計は男性持ちで、女性はタダらしい)

 それについて、その店の対応が、法的に正しいのかどうかを弁護士に尋ね、結果、退店を要求するのは不当だ、という記事だったのでですが…まあ、ほんとしょうもない話です。

 こんなの、法的な白黒じゃなくて、人として、「文化人」としてのレベルの問題だと思います。

 確かに、本来、お店側がメニュー表記などで、利用者に対するお断り事項を明確にしておけば問題なかったのに、今回の件は、店がそうした事前対策を怠ったから、発生した事例ではあります。

 でも、何というか、常識としてですね…
 
店は、あくまで「出会いの場」を商売にしていることは明白でしょう。
 別に、女性に無料で食べ放題の慈善事業をしているわけがありません。

 なのに、そこにつけこんで好き放題やること自体が、どうかと思うんですね。

 百歩譲って、あくまで悪ヂエ的に、「しれっ」とやるのは認めましょう。
 しかし、それはそれとして、店から文句を言われて反発するのは、ほんと、人として恥ずかしくないんだろうか…??と思います。

 「あ〜あ、ついに言われちゃった(笑)」

くらいのことではないのでしょうか?

 「次からはご遠慮ください」
 「もう来ませんから」

で終わる話ではないでしょうか…?

ただ、これに類似した手合いは、程度の大小はあれど、結構いるんですよね。

 例えば、ひと昔前に、よくあったケースで、ドリンク無料サービス券だけでレストランを利用する人がいました。

 飲食店がドリンクサービス券を配るのは、当然ながら販売促進の一環です。
 お茶ついでに料理も食べてほしいとか、自慢のコーヒーの味を知ってほしいとか。

 ただ、少し前までは、景表法とかをうるさく言われていない時代だったので、クーポンに、「お食事をご注文された方のみ」といった使用条件を、ちゃんと記載していないことがよくありました。

 だから、ドリンク無料券だけで利用する、なんてお客さんが、しばしば発生したわけです。

 でも、そういうのは、お店としては困るお客さんでした。
 感覚的には、スーパーの試食のようなものですね。いちいち但し書きなんてしていなくても、ルンペンが試食目的だけで連日来たりしてたら、正直、困りますよね?

 とはいえ、実際に無料券だけで利用されて、「いや、それでは困ります」と言うことは、ほとんどありませんでした。

 店の雰囲気とかメニューを知ってもらい、そこから食事の常連さんに発展すればいいな、と、とりあえずは考えるわけです。

 しかし、昔、僕が働いていた店で、どこでクーポンをかき集めてきたのか、連日、コーヒーだけをタダ飲みしに来る輩がいました。

 しかも、知り合いまで呼んで複数で。
 そして常に、食事や他のオーダーは一切しません。

 これにはさすがに言わねばと思って、

 「ドリンククーポンだけでのご利用はご遠慮ください」

と言いました。

 そしたら、

 「どこにそんなことが書いてあるんだ」
 「せっかくタダ券があるんだから毎日来てるんだ」

と、逆ギレされました。

 もちろん、法的に言えば、こっちの負けですよ。
 法的には何も書いてないこちらのミスなので、 相手の言い分は正当な主張です。

 だから、こんな後出しジャンケンみたいなこと、こちらとしても言うのは微妙だとわかっていましたが、思い切って言うことにしたんですね。
 当時はまだ、景表法とか、そこまでうるさくない時代だったので、心情的には、「空気読め」って感じでした。

 もっとも、相手からすれば、法律も知らない無知な馬鹿どもめ、と思われたんでしょうけどね。
 法的な白黒の話で言えば、こっちの負けです。

 しかし、その時はそれだけじゃなかった。
 というのは、その時、その輩は、
「タダで利用できるから、毎日来てるんだ。これは便利だな、と喜んで利用してたのに、そんなこと言われたら非常に残念だ」などと、自分の気持ちをご丁寧に説明してくれたんですね。

 いやいやアンタ、そんなことされて、嬉しい店あると思いますか?

 「ご利用ありがとうございます」

と言ってほしいんですか?

 単純に、法的権利だけを主張されたのなら、僕も、シンプルに理解出来ました。
 そうか、これは俺のミスだなと。

 でも、そんな「心情」を理解してほしい、という話なら、こっちの心情も理解しろよと。

 ほんと「空気読め」ですよ。

 こうなってくると、法律云々ではなく、本当に、何とも「無粋」な奴だと。

 もし、そこで、「やっぱ、そうだよね〜、店に何の得もないもんね!でも、今回はタダにしてよ?そこはミスだよね?そのかわり、次は食事しに来るからさ!」くらいに言ってくれたら、こちらも、すんなりミスを認める気になります。

 もちろん、本当に食事に来なくてもいいんです。
 社交辞令でいいんです。

 でも、こんなやり取りのほうが、お互い、スマートですよね?

 本質は、そういう話だと、僕は思います。

 まあ、これは飲食店サイドの願望だとしても、いっそ法律だけをタテにして、一方的な姿勢で言われるほうが、まだマシです。

 ただ、こんなことは全国の店であったようで、そのため、現在では、どこのお店でも、たいていクーポン券には、細かく注意書きが書かれるようになりました。

 食事をご注文されたお客様のみ、とか、他の券とは併用できませんとか。
 表示に厳しい時代になったので、これ自体は、正しい風潮と言えるでしょう。

 しかしですね。
 実際のところ、そう書いたとしても、

 「そんな小さい文字気付かない」
  
「事前に説明がなかった」

とか、なんやかんやと言いがかりをつけて、ゴネる輩は、今でも後を絶ちません。

 結局、こういうことを言ってくる輩って、法律がどうなんてのは実のところ後付で、単純に人間が「しみったれ」なだけなんですよね。

 とどのつまり、本質的には法律がどうのという話ではなく、「文化人」としてのレベルの問題だと思うんですね。

 店も、お客さんも、契約関係がどうのではなく、お互い、相手の気持ちを慮って、相手の立場を尊重して、スマートな立ち振る舞いをすればいいのに、と思います。

 街場の小さなお店のマスターが手作りして配ったクーポンなんかには、今でも使用ルールなんて書いてないことがあります。

 それを、マスターの不勉強と言われればそれまでですが、そこで法律を持ち出して、どうのこうの言ったとしたら、やっぱり、「無粋」というか、文化人として性根がさもしいように思います

 


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