46億年LOVE

 表題の「46億年LOVE」は、ハロプロのグループの一つ、「ANGERME」(アンジュルム)が2018年に発表した曲。
 アンジュルムというと、女優の蒼井優さんがオタクレベルのファンで、お笑い芸人の山里亮太さんと結婚したきっかけは、互いにアンジュルムオタクだったからだそうで、そのため「アンジュルム婚」と言われたりもしてるらしい。

 自分は全く知らないグループでしたが、最近興味を持った鈴木愛理さんという歌手のYoutube動画を観ていると、おすすめ動画にやたらとハロプロ関連の動画が上ってくるため、そこでひっかかったのがアンジュルムの「46億年LOVE」というPV。

 アイドルにもアンジュルムというグループにも個人的にはどうこうないのですが、このPVはすごく興味深く感じました。
 このPVは、ハロプロにしぶとくファンがい続ける理由と、同時に、なぜ乃木坂や欅に全く歯が立たないか、その理由がよく分かると思ったからです。

 結論からいって、この曲、PVともに、おそろしくクオリティが高い。
 そして同時に、びっくりするほど時代遅れ(笑)

 作曲は、林田健司さん。この人は、SMAPやKinkiKids、関ジャニなどにも多数楽曲を提供し、多数のヒット曲を飛ばしている超有名作曲家です。この曲には、林田さんの高い技術が遺憾なく発揮されています。
 
ハロプロに求められるイメージ、そしておそらく制作依頼においてオーダーされていた要望を、見事なまでの高次元に表現しきったのではないでしょうか。

 …ですが、この曲のコンセプト全てがアイディアとして古すぎる(笑)

 楽曲とPV全てを通してそこにあるのは、70年代後半〜80年代に流行したファンクとディスコのテイスト。
 そしてその時代遅れなコンセプトが織りなす、圧倒的なダサさ(笑)

 ファンクやディスコ調自体がだめとはいわない。
 2013年に大ブレイクした、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」なんかは、あからさまに70年代のフィリ―ソウルだ。
 けれどあれは、「AKBらしさ」ともいえるオタクテイストを見事に融合させて、目新しく感じるほどに時代対応していた。
 だから、AKB嫌いの自分ですらあの曲は耳に馴染みやすかった。

 しかし「46億年LOVE」は、どうも「往年のハロプロの栄光」にすがってる感が否めない。
 ファンのコメントを見ていると、この曲を「現代のLOVEマシーン」と評するハロオタが多いようですが、それがまさにその証左なように思う。
 ハロプロが時代を席巻していた2000年頃にこの曲が発表されていたら、間違いなくミリオンを獲れたと思う。
 けれど、今、LOVEマシーンのような作風の曲を発表して意味があるのか??

 あの当時は、時代の中心にディスコブームを体験している団塊世代が社会の中心にいて、そうした親からディスコブームの影響を幼少体験に持つ子供たちが若者の中心にありました。
 そしてそこに、急速に広まっていたインターネットによって、それまでマイナーだったサブカルチャーが時代のトレンドとして花開こうとし、とにかく文化がカオスな状況にあったから、その時代を映すかのような、あの何ともいえないカオスな「ダサかっこ良さ」が受けたわけだ。

 しかし、オタク文化も成熟し、世の中のライトな層は乃木坂のようなシンプルでお洒落系アイドルを支持し、マニア層は欅坂のような厨二病路線が支持されている時代に、この「THE ハロプロ!」なテイストがブレイクすると思ったのだろうか??

 ただ、楽曲そのものは悪くない。
 16ビートの裏を強烈に意識させるファンキーなAメロ・Bメロと続き、それが後半サビでは一転して強烈な8分のディスコビートに。
 それも、違和感のない流れで、畳みかけるようにリズムが迫ってくるのは、見事なアレンジだと思う。
 けど、それら全てを「古くさい物」にしてしまったのが、あのPVだと思う。

 たぶん、オタクにしてみれば、

 「何に言ってんだ? あのPVが最高だろ!」

 と言いたい所でしょう。

 いや、正直、僕個人としては、あのPV、最高だと思いました(笑)

 けど、あれに心をくすぐられる層って、親の影響で80年代の音楽や文化を幼少体験に持つ人か、ハロプロ全盛期にハロプロのノリにどハマリした人に限られてると思うのです。

 まずあのレーザービームが光る舞台演出は、まさにディスコそのもの。
 そして、背景に広がる宇宙空間とオカルティックな古代文明。
 あれって、アポロ計画の月面着陸や、「2001年宇宙の旅」、「スターウォーズシリーズ」といったビジュアルSFブーム、そしてツタンカーメンの秘宝とかエジプト古代文明の展示会が世界中で開催された、1970年代〜80年代の流行まんまですよね。
 だから、その頃の世界のファンクやディスコ、ポップグループは、レコードのジャケットに宇宙やピラミッドなんかをテーマにしたものがすごく多かった。当時はそれが最先端のカルチャーだったから。

 「宇宙のファンタジー」の大ヒットで知られるアース・ウィンド&ファイアは言うに及ばず、Pファンクのパーラメントなんかもそうだし、ウェストコーストのポップロックのTOTOなんかも「宇宙の騎士」なんてアルバムを出していた時代。

 そして、一番のサビに、両サイドに突然出てくる意味不明なスフィンクス。
 あれがとんでもなく良い味を出してるわけですが、あれの元ネタはおそらく、ディスコの名作、ボーイズタウンギャングの「君の瞳に恋してる」のMVですよね。女性ボーカルの両サイドで微妙な踊りをするだけの謎の男(明らかにゲイ)と、さらにその両サイドに鎮座する、ますます意味不明なスフィンクス。
 それを彷彿させる世界観が、あのPVを感動的までに印象的なものにしていると同時に、とてつもなくダサイ(笑)

 そして、背景で安っぽい動きを見せる、紙芝居のような宇宙飛行士や惑星なんかも、CG技術の低かった1980年代のCMなんかで見られた手法。
 演じるアンジュルムメンバーのダンスも、特にサビの部分はディスコ的な振り付け要素満載。

 とにかく、何もかもが、そうした過去の憧憬をくすぐるエッセンスに満ちているわけですが、それに心惹かれるのはそれにノスタルジーを感じられる人、または全盛期のハロプロに熱狂した人に限られたことであって、新しい世代の人が乗ってくるかは別問題です。
 僕なんかは、ぶっちゃけこの曲、すごい好きです。ダンスのフリ、カメラのアングル、カオスな演出まで、その全てがすごく見ていて楽しい。
 けど同時に、どこか冷めた感覚もするんですよね。こんなレトロテイストの動画に心惹かれるなんて、俺も古い感性の人間なんかなあ、って。

 一方、AKBの恋するフォーチュンクッキーは、古いフィリ―ソウルを持ち出しながらも、あくまであのゆるいノリを利用しただけで、ノルタルジーは全く売りにしてないし、感じることもなく楽しめるように作られています。だから若者にもキャッチーに受け入れられたのでしょう。

 何がいいたいかというと、結局ハロプロって、既存のハロプロファンに迎合しているか、もしくは往年のテイストこそハロプロらしさだと思ってそこに留まりすぎてるんじゃないかと思う。
 でも、往年のハロプロの、独特の「ダサカッコイイ」は、ハロオタにとってはこの上ない大好物でも、今の若い人にとっては、ただの「ダサイ」だと思うんです。

 だから、根強いファンが生き残る一方で、新しいファンを獲得することが出来ず、凋落の一途から抜け出すことができないんだろうなあ、って思った次第です。

 といって、現代的にすれば売れるというわけではないと思います。
 特に、景気が下がって消費の時代ではなくなった今、広く愛される音楽というのは、一過性ではなく普遍性があるものだと思います。

 いい加減おっさんになった僕なんかでも、バックナンバーさんやOfficial髭男dismさんなんかはよく聴くし、カラオケでも歌うほどですが、彼らの音楽って、奇抜でもなんでもないんですよね。
 あくまで、ごく普通にメロディアスで、良いリズムをしている。
 もちろん、個性やオリジナリティは不可欠だけど、へんに尖らせたりはしていない。
 あいみょんさんなんかは、アウフタクトから走らせる旋律とか、ブレスの取り方が独特だけど、奇をてらっている感じはないし、音楽全体はすごく分かりやすい。
 強いて現代性となると、最近の歌手はみな、すごく技巧的。表現の声の乗せ方や節回しハンパなく上手。でもこれって、古いも新しいもなく、技術レベルが上がっているだけの話だと思う。

 結局はそうした、シンプルな音楽としての良さが、年齢を問わず聴かれることになり、結果的に大人気になるんだと思います。

 というわけで、アンジュルムの「46億年LOVE」は、すごくマーケティング的なものを考えさせられたPVでした。

 

 


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