あいみょんさんはファンキーだ

 近年、若者から絶大な支持を集めているシンガーソングライター、あいみょんさん。
 はじめてその名前を聞いた時は、またしょうもないアイドルかと勘違いして無視していたのですが、とある機会にその歌を聴いて一瞬でやられました。

 そんなあいみょんさんの魅力は、ファンキーなリズムにあると思っています。
 
あいみょんさん自身は、洋楽かぶれのバンドガールだったわけではなく、スピッツや尾崎豊さんを好むような、「純J-POP」な人だったようで、フォークソング好きな人なんだそうですが、持って生まれた感性はファンク寄りだと思います。
 
楽曲を作る際には旋律よりも歌詞を重視するとのことですが、その発想もファンク寄りで、詞とその抑揚を重視した結果、独特のリズムを生んでいるのもあるでしょう。

 ただ、wikipedia情報なんかでは、シングル「愛を伝えたいだとか」で、これまでのフォーク寄りのアレンジからファンクアレンジ……なんてことが書かれていますが、この曲については全く本質じゃないと思う。
 むしろ「愛を伝えたいだとか」は、僕に言わせれば全然ファンクではなく、クラブ系だと思う。
 もっとも、そうしたダンス音楽を辿ると源流にはファンクがあるので、そういう意味ではファンキーな要素はあるけれど、それを言ってしまったらディスコもラップも全部ファンクになってしまう。
 楽曲の軸にファンクがあるかどうかでいうと、「愛を伝えたいだとか」はダンス音楽が軸で、それよりも「君はロックなんて聴かない」のほうがずっとファンキーで、表面的にはポップに聴こえる「マリーゴールド」も実は激しくファンキーだと思う。

 ファンクの定義って難しいかも知れないけれど、これはやっぱりジェームズ・ブラウンを聴いたらわかる通り、強烈なオフビート、しかも16分音符のウラが激しく強調され、それが二小節単位のフレージングの中で縦横無尽に刻まれる部分だと思う。
 これは僕自身がドラム出身だから特に感じることなのかも知れないけれど、ジェームズ・ブラウンやミーターズといったどっぷりファンキーな音楽を聴いていると、16分のウラのゴーストやアクセントを入れまくりたい衝動に駆られるんですよね。
 歌や旋律のリズム自身が16分のウラで入ってくることが多いからでもあるけれど、歌の節回しとか抑揚、ブレスの取り方など、歌の節々に16分のウラを感じさせる、オンビートで歌っている時ですらウラのウラのリズムを感じさせてウズウズしてくるんです。
 そして、二小節単位のフレーズ感。これはファンクだけとは限らないけれど、一小節区切りだとリズムが単純化してしまうところ、二小節で回ってくる感じは、ファンキーなグルーヴには欠かせない幅感覚だと思う。

 あいみょんさんの歌にも、まさにそれをめちゃくちゃ感じるんですよね。

 日本では、ダンスっぽい曲調でペンタトニックが入るとすぐ「ファンクっぽい」っていう人がいるけれど、それはファンクの本質とは全く違っていて、こんなのファンクじゃねーよと言いたくなることがめちゃくちゃ多い。
 バックビートが強い曲だとロック的だと判別されますが、オンビートでズンズン乗るようなアレンジの曲なんかで
、そこにブラックミュージック的な雰囲気が入るとファンクっぽいとか言われたりすることが多い気がする。
 こういうノリの曲って、たいがい1980年代のディスコビートの影響が強くて、ディスコは確かにファンクから派生した音楽の一つではあるけれど、ファンクからファンキーさを削って単純化したような音楽なので、これをファンクの範疇に含めるのは違うと思う。
 フレーズ感も一小節区切りだったりして、どんなにリズムが強くても、こうしたシンプルなリズムの曲をファンクっぽいとか言う人は、わかってねーな、と言いたくなる。

 旋律にペンタトニックを使ってブラックミュージックっぽくするのも、それはファンクというよりジャズやブルースだ。
 どちらもファンクよりも古い音楽で、むしろファンクに影響を与えた側の音楽であるけど、ファンクとは違う。ファンクの本質はあくまでリズムにあり、それも単なるオフビートではなく、16分のウラにまで入ってくる感覚が最も重要。
 だから、アース・ウィンド&ファイアーなんかはブルージーな旋律はなくともファンキーに感じられるわけだ。

 ちょっと話が外れてしまいましたが、あいみょんさんの歌の魅力は、とにかくその歌い方のリズムのファンキーさだと思う。
 もちろん詞も旋律も声も素晴らしいけれど、メロディーライン自体がめちゃくちゃキャッチーで耳に残るというわけではなく、歌の流れ全体が生み出している独特のグルーヴ感があって、多くのファンもそこにあいみょんさんならではの魅力を感じているのではないでしょうか?

 といって、ブラックミュージックっぽく歌ってほしいわけではなく、むしろあくまでJ-POPなアレンジと空気の中でファンキーに歌うあいみょんさんだからこそいいな、と思う今日この頃です。


 

 


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