クリエイターはダサい人が多い

 お洒落なデザインをする人と、お洒落な人とは、別の人種だと思います。

 普通なら、お洒落な服の人を見ていると、「センスが良さそう」と、たいていの人が感じるでしょう。
 逆に、ダサい服装の人を見ると、「センス悪そう」と思うことでしょう。

 例えば、素敵なイラストやデザインをお願いするとしたら、お洒落な人とそうでない人の、どちらにお願いしますか?

 普通に考えたら、普段からお洒落で、センスの良さそうな人にお願いしますよね。
 見るからにダサい人に、センスあるデザインが出来るように思えませんから。

 でも、実際はそうでない場合が多々あるように思います。
 というよりむしろ、逆であることのほうが多いようにすら思います。

 これは、美術でも音楽でも、アーティスティックなものを創造するクリエイター的な感性と、自分自身を美しく見せようとする感性は全く別物で、むしろ「相反する」場合も多いからではないかと思っています。

 何故なら、アーティストやクリエイターといった人種というのは、「何を作れるか、どんなものを生み出せるか」ということに最大の興味がある人たちで、「作る」ことに目的があり、「自分が作ったもの」に対してのこだわりや執着が一番だからです。

 一方、「お洒落な人」というのは、いかに「自分自身が綺麗に見えるかどうか」が最大の関心ごとであり、自分が何かを作ることが目的ではないし、他人に自分をメイクさせてもいいわけで、あくまで「自分がどう見えるか」が主眼です。

 つまり、そもそもの動機が全く別、ということです。

 モノを作るセンスが良ければ自分自身もお洒落にできる、と思われるかも知れませんが、自分自身を美しく見せようとするのは、センスとは別に、ナルシズムというか、そうした性格を持ち合わせていなければ実行できません。
 特に、自分の外見に自信がない場合、美的感覚があるからこそ、たいした素材でもない自分を装飾でどうにかしようとするのは、逆に醜悪に見えたり、美的に感じないため、むしろ「お洒落したくない」という心理すら働きます。(
ナルシストなアーティストもいるとは思いますが)

 それに、昔の画家や音楽家といった「芸術家」といえば、髪の毛ボサボサで汚い服装の、だらしない格好のイメージがあるくらいではないでしょうか??
 芸術家というのは、絵でも音楽でも「客」を呼んでおきながら、自己満足な作品を一方的に押し付けるタイプが多いくらいなので、そこには客観性なんて微塵もありません。
 そのため、デザイナーやアーティストといった人には、奇抜でヘンテコな服装をする、お洒落センスも普通とはズレた人がよくいます。
 これは、美の創造と自分への関心が、全く別物であることがはっきりとわかる例だと思います。

 一方で、「お洒落な人」というのは、「周りからどう見られるか」に意識が寄っているので、その場合は独創性よりも客観性が重要になります。
 
以前ファッションの本で、職業別によく買うブランドのアンケートを見たことがあるのですが、それによると、高級ブランドものを好んで買う職業は、広告代理店や企画系の人に多く、クリエイターやデザイナーといった職業の人が一番良く買うブランドはユニクロになっていました(笑)

 これって、すごくわかる感じましませんか?

 イベント屋とか企画系の人って、創造への情熱というよりも、自分が華やかな世界の住人であることに憧れてるような人種の人が多いような感じで、だからお洒落への意識も高い人が多いように感じます。

 だいたい、企画の仕事って、一見するとクリエイティブな仕事に見えますが、自分がクリエイトするわけではなく、実際に作る人はそれぞれ専門職の人で、企画屋当人は、それらを繋いでいくまとめ役というか、ディレクターでありマネージャー的な人々だと思います。
 なので、社交性があって、コミュニケーションに長けてて、人ウケが良いことが大切なので、身なりをちゃんとしてお洒落な格好をするのは必要なことでもあると思います。

 ここで求められるスキルは、創造性とか自身のセンスではなく、むしろ周囲に迎合できる客観性や協調性です。
 
こう考えると、お洒落上手な人というのは、むしろクリエイティブとは真逆の人種ではないかと思います。

 逆に、デザインなどのアーティスティックな実務をする人は、変わり者で個性的な人が多く、社会性が低くてコミュニケーションも下手で、地味で洒落っ気のない人が多い(笑)

 とはいえ、デザイナーがダサ過ぎると、見た目でクライアントに信用されなくても困るので、お洒落な格好を仕方なしにしている場合もありますが、それは外圧によって義務的にやっているのであり、主体的にお洒落でいたいと思う人とは、動機が全く異なります。
 アーティストなんかは、本人の好きにさせてると危険なので、イメージを損なわないために事務所がファッションコーディネーターを付けたりするのはよくある話です。

 かくいう自分の場合も、こんな記事を書いておきながらではありますが、ファッションに自信はありません。
 子供の頃の夢は天文物理学者か芸術家で、学生時代はミュージシャンを目指していたので、気質はどちらかというとアーティスト気質だと思います(自称)

 社会人になるまではお洒落には全く興味はなかったし、興味を持つようになったのも、お洒落がしたくなったというより、自分の働いている飲食業界の社会的地位が低いため、そのイメージを変えたいために、意識的にファッションを勉強したという外的要因が大きくあります。
 逆に、そういう気質だったから、こうして記事を書けるくらい頭から入った部分が大きいです。

 自分の話はさておき、よく誰かに仕事をふる時に、何かセンスが問われるようなものを作る仕事となると、つい見た目がお洒落な人を選びがちですが、必ずしもそれが正解ではないと思います。
 といってダサい格好の人にやらせるのも勇気がいるので、難しい話ではありますが、お洒落を生み出す能力と、お洒落に着こなす能力は全く別種だと思うので、その見極めは意外と重要だと思います。

 

 


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