ボタンダウンシャツ

 「ボタンダウンシャツ」とは、ワイシャツの襟の端っこをボタンで留めるようになっているタイプのもののことです。

 日本のファッション界では、「ボタンダウンシャツはフォーマルには不向き」とか、「ボタンダウンシャツにネクタイはNG」とか、色々と否定的な風潮があるようですが、僕はこのシャツが結構好きです。

 ボタンダウンシャツは、アメリカン・トラディショナルを代表する服飾メーカー、ブルックス・ブラザーズが1896年に考案したシャツです。
 
ポロの競技中の服装をヒントにして生まれたシャツで、「ポロカラーシャツ」とも言い、ハーバード大学をはじめとするアイビーリーグで流行し、アメリカンファッションのスタンダードとして定着したものです。

 ですが、アメリカという、ヨーロッパから逃げてきた移民によって作られた国で生まれた後発文化のため、スーツの本場であるイギリスなどでは、フォーマルウェアには使用されないそうです。

 日本では戦後にアメリカ文化の影響を大きく受けたことと、1960年代のアイビーブームを代表に、アメリカンスタイルの服装が流行したことから、日本にもボタンダウンシャツが広まりました。
 1967年にスタートしたモンキーパンチ原作の漫画『ルパン三世』の次元大介も、当時のトレンドの影響か、ボタンダウンシャツを愛用しています。

 それが、バブル以降にヨーロッパのブランドが次々と上陸してから、アメリカ偏重のファッションではなく、より伝統と格のあるヨーロピンアンなスタイルに人気が集まり、ボタンダウンシャツは一時マイナーになりました。

 そこに、「クールビズ」が2005年に生まれて以降、再び人気が高まりました。
 
ノーネクタイにすると胸元がどうしても寂しくなるので、襟にワンポイント入ったボタンダウンシャツはそれを補えるからです。

 ですが、最初にも書いたように、日本のファッション界では、「ボタンダウンシャツはフォーマルには不向き」とか、「ボタンダウンシャツにネクタイはNG」という風潮があります。

 でも、僕としては正直、どうでもいいよなあ、と思います(笑)

 フォーマルのTPOに対して、私見で「どうでもいい」というのはおかしいと思われるでしょうけど、むしろ、ネットなどを検索してまことしやかにヒットするそうしたルールのほうが、実態のない私見じゃないか??と個人的には思うのです。

 まず、「ボタンダウンシャツはスポーツシャツなのでカジュアル向き」とか書いている記事がありますが、それは完全に誤りでしょう。
 単にポロシャツから着想して生まれたと言うだけで、スポーツ用に作られたわけではありません。っていうか、スポーツ用のワイシャツって何なんだ(笑)

 そもそもアメリカではフォーマルなシャツとして作られたもので、歴代の多くの大統領が、公務の場で着用しています。
 
大統領が公式の場で着用するシャツがフォーマルでなければ、一体何がフォーマルなのでしょう(笑)
 もちろん、ボタンダウンシャツを着ながらネクタイもしています。

 確かに、イギリスなどではそうしたアメリカのボタンダウンシャツの文化自体を認めてないという話があります。
 だから、ボタンダウンシャツをフォーマルな場で着てくるのはアメリカ人と日本人だけで、イギリス人との商談にボタンダウンシャツを着ていくと恥をかく、と言っている人もいます。
 イギリス人に直接聞いたわけではないので本当がどうかわかりませんが、フォーマルウェアの決まり事にお堅いイギリスのことですから、それは本当かも知れません。

 しかし、イギリスを基準にするのなら、クールビズも一切否定すべきでしょう。
 実際、ファッションにこだわる人の中にはそういう人もいて、そこまで頑なにイギリス信奉するのなら、それはそれで筋の通ったポリシーと言えるかも知れません。

 ですが、ボタンダウンシャツを一応は認めておきながら、「大事な商談には不向き」とか「ネクタイはNG」とか、その基準はどこから来たんだよ、と思います(笑)

 確かに、ビジネスで、不特定多数の人と接する以上は、あらゆるタイプの人にも不快感を持たれないように、無難な格好をすることは大事です。
 
しかし、ボタンダウンにネクタイNGとかいう微妙なルールは、一部のファッションオタクが勝手に広めてるだけのローカルルールで、そういう人が余計なことを言わなければ、普通の日本人なら誰も意識しないレベルのことだと感じます。

 そもそも、一口に「フォーマル」といっても幅広い言葉です。
 よく「冠婚葬祭」なんて言葉でまとめられますが、ドレスコードとなると、イギリスでは冠も婚も葬も祭も、しかも昼なのか夜なのかによっても、それぞれふさわしい服装が異なります。
 日本では、いわゆる真っ黒な「礼服」を着ていれば、ネクタイを白か黒かに替えるだけで結婚式も葬式も対応できますが、「礼服」というもの自体、正礼装の総称であって、イギリスであれば、夜の慶事であればタキシードだし、昼間の葬儀であればディレクターズスーツを着たりと、細かく違います。

 ましてやビジネスと葬儀ではフォーマルのレベルが異なるし、堅くしていれば万能というわけでもなく、商談や取締役会に礼服を着てきたらおかしいですよね(笑)

 それに、ここは日本です。
 どれだけ本場イギリスがどうだと主張したところで、日本には定着していないことばかりだし、例えば本来イギリスでは葬儀の正装であるディレクターズスース(黒のジャケットのグレーのストライプのパンツ)を日本の葬儀で着てきたら、明らかに浮きます。こうした格好は日本では結婚式などで見られるような格好なので、むしろ白い目で見られてしまうかも知れません。

 イギリス絶対主義者の人は、日本の葬式でもディレクターズスーツを着るのでしょうか?
 喪主ならともかく、参列する時に着て行ったら、失敗する率は相当高いでしょう。

 ボタンダウンシャツについても、お堅い場に派手な色のボタンのシャツはおかしいと僕も思いますけど、透明ボタンの白シャツなら、気にしない人がほとんどではないでしょうか?

 それに、カラーのシャツを着用して問題ないような場であれば、カラーのボタンダウンシャツでも良いと思います。

 もしイギリスに出張に行くのなら、イギリスのルールを尊重する気概は立派です。
 逆の立場で、イギリス人が日本に来て、日本の文化と中国や韓国の文化をごっちゃにしてきたら、いい気はしませんから。

 でも、例えばイギリスでアジアの文化が流行して、日本も中国もごっちゃにした服装が流行ったとしても、それはそれで微笑ましいことだと思うんです。
 イギリス人が、イギリスの国内でアジア文化をどう消化するかは自由ですから。

 堅苦しいイギリス人だって、アメリカのボタンダウンは認めないといっても、革靴ではアメリカ生まれのグッドイヤーウェルト製法をちゃっかり取り入れて、それが主流になってるわけですから、結局はイギリス人にとっても好みの話です。

 日本の西洋式の服飾文化において、イギリスやイタリア、アメリカなど複数の国から、気に入った部分を取り入れて混在した状態になるのは自然なことで、そこにどれだけイギリス式を重視するかは、個人の主観の要素が大きいと思います。

 全て本場イギリスのスタイルを正と主張するのならまだしも、夜にクラシックの演奏会を聴き行くのに正装するわけでもなく、葬儀には黒いスーツであればOKというような融通をきかせておきながら、ささいなボタンダウンだけをどうのこうの言うのは、マニア的な発想に感じます。

 単純にイギリスのスタイルが好き、というのは個人の勝手として、そうでなければNGとか言い出すのは、西洋文化に対するコンプレックスが偏った形で出ているか、ボタンダウンがイギリスでは認められてないという薀蓄を「知ったかぶり」したいだけだと思います。

 そんなわけで、僕はボタンダウンシャツに平気でネクタイを締めます。
 そこで、ブルーのボタンならブルーのネクタイ、臙脂色のボタンなら臙脂色のネクタイというように、ボタンとネクタイの色を合わせるのが好きです。

 でもまあ、ビジネスウェアは他人の目を気にしてする側面もあるので、無難にいきたいなら、状況によってはボタンダウンを避けた方が良いこともあるでしょうね。
 老舗大企業の取締役会で、若手社員が色のついたボタンダウンシャツを着ていたりしたら、「何だコイツ」と思うベテラン社員がいるかも知れませんので。
 
 なので、シャツを買い替えているうちに気がついたら全部ボタンダウンシャツだった、というようにはならないように気を付けたほうがいいかもですね。

 


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