キャブ・キャロウェイ

 偉大なるジャズシンガーであり、エンターテイナー歌手の先駆けであるキャブ・キャロウェイが僕は大好きです。
 日本での知名度は低いですが、アメリカでは絶大な人気を誇り、今でもリファレンスされている伝説的な歌手です。

 生まれは1907年で、一世を風靡したのが1930年代なので、大昔のスウィングジャズ時代の歌手でありダンサー。
 父親は弁護士で、黒人としては裕福な家庭に生まれ、キャブ自身も大学に進学していましたが、音楽の道に進むことを決めて中退。父親はがっかりしたそうですが、結果的には大成功でした。
 当時大人気だった黒人のビッグバンド、デュークエリントンが出演していたマンハッタンのコットンクラブで、エリントンがツアーに出ている間の代役として出演して大当たりしたのが大スターとなるきっかけです。

 人種差別の激しかった当時にあって、白人から支持されていた黒人は多くありません。
 コットンクラブがまさにその例外的な場所で、客は全員白人の高級クラブでありながら、出演するのは黒人という、当時にしては稀有な場所でした。
 その地位を確立したのが偉大なデューク・エリントンですが、それに劣らず人気を得たのだからすごいものです。
 そこで人気を得たキャブは、ラジオにも出演すると瞬く間に話題になり、全米で一二を争うほどのトップスターになりました。

 その頃のジャズというのは、飲み屋のショウ的な存在だったり、ダンスの伴奏といった扱いが中心で、歌手もあくまで「歌う」ことが役割でした。
 しかしキャブは、歌いながらステージを縦横無尽に駆け巡り、「エンターテイナーとしての歌手」というスタイルを確立した人物です。

 といっても、歌ももちろんすごいです。
 マイクなんてなくても通る太い声に、高らかなハイトーン。そして、ルイ・アームストロングから学んだ、スキャットによるフリーなアドリブ。そして何より、どこまでもソウルフルで唯一無二の個性的な歌い方。
 でも、歌が上手いとかそういう話じゃないんですよ。その空間全てが「キャブ・キャロウェイ」になるんです。
 そんなステージパフォーマンスは、観る者・聴く者を惹きつけてやみませんでした。

 僕がキャブキャロウェイを知ったのは高校生の時。
 父親が録画していた深夜映画の中に、「ミニーザムーチャー」というジャズの伝記的な映画があり、それで観たのが最初です。

 「ミニー・ザ・ムーチャー」というのはキャブの代表曲で、とにかく、ジャジーでカッコイイ!!
 魂を揺すぶられるほどゾクゾクしました。
 大学に入ってジャズ研の仲間に観せると、誰もが最高って言いました。

 日本でキャブのことを知っている人は、ジャズマニアか、ブルースブラザーズのファンくらいでしょうね。
 ブルースブラザーズはキャブキャロウェイをリスペクトしていたので、大ヒットした映画「ブルース・ブラザーズ」に出演して歌を披露しています。

 でも、ジャズではなくとも、歌のエンターテイナーを目指している人なら、原点的な存在として、観る価値があると思いますよ。
 歌でバンドをリードし、観客とも一体化するその姿は、ライブパフォーマンスの本質が集約されていると思います。

 あとキャブの凄いのは、80歳を過ぎても現役だったこと!!

 高齢になっても現役を続ける歌手は少なくありませんが、キャブの凄いのは、80歳を過ぎても衰えを感じさせないところ。
 youtubeで、キャブが81歳の時のライブ映像とかがありますが、壮年期と変わらないような声量で朗々と、しかもキーを下げずに歌い切ります。
 こんなおじいさんを目の当たりにしたら衝撃ですよ。

 ジャズやエンターテイナーに興味がある人は、是非調べて観てください。

  おまけ:youtube⇒minnie the moocher
 

 


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