若手の離職を食い止めるには中堅を輝かせる

 最近、若手不足のため、企業の就職戦線は売り手市場と言われ、採用後も、早期離職が多く、それをどう食い止めるかに悩んでいる企業が多いようです。

 結論から言って、中堅社員、つまり中間管理職クラスの社員の待遇や教育環境、活躍環境を手厚く整え、活き活きと輝かせることが最も重要なことだと思います。

 逆に、多くの企業が失敗しているのが、「最近の若者は気質が変わった」と思って、やたらと甘やかしたり、好待遇にすることです。

 僕は仕事柄、まさに「近頃の若者」である、多くの現役高校生・大学生と一緒に仕事をしています。
 それで思うことは、人間としての性質は、今も昔もほとんど変わっていないということです。

 変わったのは、外部環境です。
 今では、若者不足でどこも採用難だから、求人だらけでバイトなんて選び放題。
 だから、嫌なことがあると簡単に辞めて他を探すようになる。
 新卒社員も同じだと思います。
 辞めてもすぐに再就職先なんて見つかると思ってるから辞められる。
 情報なんて、インターネットから、友達から、いくらでも入ってくる。

 これを聞いて、「そんなの、環境によって行動が変わったのなら同じことだろ?」と思う人は、思慮が浅い。浅すぎる。

 本当に若者の気質が変わったのなら、誰も残業なんてしないし、同じ職場に長くいる若者は誰もいない、ということになります。

 でも、実態は違います。
 今の高校生や、大学生でも、仕事が面白いと思ったり、職場が楽しくて愛着を持ったら、勤務時間が過ぎてても黙って働いてくれたり、覚えたい仕事を家で覚えてきたりなんてことは、普通にあるし、高校生から大学の卒業まで、5〜6年以上続けてくれるバイトの子だって珍しくありません。

 僕が昔マネージャーをしていたレストランでは、バイトの定着率が異常に高く、一年以上の間バイトの離職がゼロで、人が増え続けたことがありました。
 
その理由は簡単で、従業員一人ひとりと、仕事のやりがいや、目指してほしいことをいつも話し、定期面談などもきちんとやっていたからです。

 ただ、僕の店のバイトの定着率が高かったこと対して、当時のミドルマネージャーは、「お前がバイトを甘やかしてるだけだ」と言ってきました。

 バカな上司だなあ、と思いましたね。

 はっきり言って、バイトを甘やかしていたら、、むしろ離職率が上がります。
 理由は単純。
 バイトを甘やかし、レベルの低い仕事やルール違反を見逃していたら、そのバイトは仕事をなめはじめます。
 仕事をなめはじめると、仕事が面白くなくなります。
 しかし、特に飲食店の場合、バイトの意思とは関係なくお客さんはやってきますから、仕事からは逃げられません。
 そうなると、だりーなーと思いながら料理をしたり、嫌々接客をするようになります。
 そうなってしまったら、長く続くわけがありません。
 そこで仲の良い友達に、「そんなにダルいんだったら、うちに来たら? 楽しいよ?」と言われたら、すぐに鞍替えします。

 バイトを長く続けされるには、そこで働く時間を楽しいと思わる、つまり、そこで発生すること、すなわち料理や接客の楽しさ・やりがいを教えることが一番重要なのです。
 そして、仕事の出来る先輩をカッコイイと思い、自分もそうなりたい、と思うようになっていくことです。

 これって、部活にも似てるんですよね。
 目標もなく、ダラダラやっているだけの部活やサークルは、たいがい幽霊部員が多く、入れ替わりも激しい。
 でも、ちゃんと目標があって、それに向けて試合で活躍している先輩がいると、自分もそうなりたいと思うし、試合で足をひっぱったら格好悪いと思うようになる。
 だから、自分も頑張ろうと思うようになるのです。

 友達に「うちに来ない?」と誘われても、「いや、今のバイト先が楽しいから」と思われなければいけないのです。

 結局は、「そこに長くいたいと思えるかどうか」が本質なわけです。

 それを正社員に置き換えれば、仕事のやりがいを教え、成果を出して長く続けた先の自分の未来像が、どのように見えるか? ということです。

 そうなった時のモデルは、当然目の前にいる先輩だったり、身近な上司、つまり中間管理職なわけです。

 最近、「働き方改革」の名の下、若手社員を定時に帰らせたしわ寄せを、残業のつかない中間管理職がかぶっている、という記事をよく目にしますが、それが最もダメなパターンでしょう。

 そうなってしまったら、誰がそんな中間管理職になりたいと思いますか?
 この会社にいても、先はないな、と思われるだけではないでしょうか?

 例えば、どこの業界とは言いませんが、出世すれば芸能人や有名人と近しくなれて、グラビアアイドルなんかとウハウハできたり、有名スポーツ選手やIT企業の社長と結婚できる業界なんかでは、今の時代でも若手社員は馬車馬のように働き、上司から受ける奴隷同然の扱いにも歯を食いしばって耐え、それでもその業界で働きたいという若者が後を絶たない人気業界です。

 あまり良い例ではありませんが、結局、そこでの未来像に魅力があれば、「今時の若者」とか全く関係ないってことです。

 コンプライアンスのなかった昔だって、当時の若者が何の抵抗もなく従っていたわけでも、納得づくだったわけでもなかったと思います。
 ただ、今のようにネット社会ではなく、携帯電話すら当たり前でもなく、昔の知り合いとメールやLINEで繋がっていられる時代ではなかった頃は、ひとたび会社に就職すると、そこだけが「社会の全て」に近かったし、その外に出て行くハードルは高く、どんなに理不尽に思えても、そこのルールが世の中のルールだと信じ込まされていただけです。

 これは人間の本質そのものとは似て非なるもので、ここの認識を取り違えると大きな判断ミスを起こします。

 むしろ、いつの時代も若者は刺激に飢えています。
 だから、甘やかすことよりも、多くを要求した方が効果的です。
 そこで重要なのは、それを乗り越えた先がどうなるのか? ということです。

 明るい未来も見えないのに要求だけ高かったら、そりゃ辞めますよ。
 でも、そこにスマートで悠々と働いている上司がいて、仕事を覚えて出世したら自分もああなれるんだ、と思えたら、やる気になれるというものでしょう。
 それが逆に、頑張った先があれか? と思われてしまったら、誰がやる気になるかって話です。

 コンプライアンス前時代も、当時の若者が決して我慢強かったわけではないと思います。
  単に、出世さえすれば、王様のように偉そうに出来るあっち側にいけると思っていたから、耐えられただけでしょう、

 最近のニュースにも、新入社員を過保護にする人事部に対する批判記事がありましたが、そういう大企業の人事部ってバカだなあと思うと同時に、一種の大企業病なんだろうな、とも思う。

 人事部の採用担当は、採用することと新入社員のケアに責任を負っているから、一番困ることは、自分たちが管理している間に辞められてしまうことです。
 だから、採用段階で甘いことを言い、入社してからも人事部付けの期間とか、配属して一年くらいの人事部が経過を追っている期間中に辞められないよう、全力で保護するわけです。
 配属して二年目くらいになればもう、配属先の責任と言えるから、そこから先は知らん顔。
 だから、三年目あたりで辞める社員が多くなる。

 おそらく人事部の言い分は、配属先での管理が杜撰だから、人事部が関与しなくなった途端に辞めるんだ、と主張するでしょう。

 しかし、そこにある問題は、人事部が自分たちの預かり期間に辞めらないことばかりを意識し過ぎることだと思います。
 採用の本質ってなんなんでしょうね?
 短期間で辞められないこと?

 違いますよね。
 むしろ、現場適正の無い社員には早々に辞めてもらう方が、無駄に教育コストも発生せず良いのではないでしょうか?
 それを気にするより、会社の未来に使える人材に育てていくことが本質的な役割ではないのか?

 でも、大きな会社は往々にしてセクショナリズムに陥るから、自分の担当する管轄だけ・担当する間だけ、自分の評価が下がらないことに全力になる。
 大きな組織で人事部が社員一人ひとりを五年も十年も追い続けるのは大変だし、十年後に立派な人材になったところで、当時の人事部が評価されるわけでもない。
 だから、そういう思考になるのは当然といえば当然のこと。
 けど、
製造のラインなら、それぞれがパートを守るだけの組織でいいかも知れないけれど、人事部がそれじゃあダメでしょうね。
 これは、人事部だけではなく社長や経営陣の問題ともいえる。
 部門が短期成果に走るのは止むを得ないことで、長期視点でのミッションを設定するのは社長や経営陣の役割です。

 いずれにしろ、若手社員に長く働いてもらいたいなら、その会社の中での未来像を見せること、つまり、いかにして中堅社員が輝けるかに投資をすることでしょうね。
 人事部が真剣に研究して企画すべきことは、むしろそこだと思います。
 それに、中堅社員が輝いたら、その企業にとっても大きくプラスのはずです。
 確か、伊賀泰代氏の『生産性』という本の中でも、生産性を上げるには中堅社員が一番もポイントみたいなことを書かれていた気がします。

 未来像さえ輝いていれば、新入社員自体の扱いなんて、少々過密に要求しても良いくらいだと思います。
 むしろ若い社員は成長意欲が高いから、目標地点に魅力があれば、それを受け入れると思います。
 だから、新入社員に投下する経営資源を、もっと中堅社員に回した方が効果的だと思います。
 遠回りに見えても、それが一番の近道だと思います。

 


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