MISIAさん

 日本で一番歌の上手い女性シンガーは? と聞かれたら、僕は迷うことなくMISIAさんを選びます。
 おそらく現役歌手という点であれば、MISIAさんを一番に上げる人は結構いると思います。

 メジャーデビューは1998年。ファーストアルバムは250万枚も売り上げるというとんでもない大ヒットを飛ばし、200万枚売り上げたシングル「Everythig」を知らない人は、当時いなかったでしょう。
 その頃は、宇多田ヒカルさんや倉木麻衣さんといった、R&B系女性シンガーがブームになっていた時代。1990年代の終わりから2000年前半期において、MISIAさんには絶対的な評価と知名度がありました。

 ただ、それだけの人気歌手でありながら、テレビの歌番組などに全くといっていいほど出演しないことから、MISIAさんはトレンドとして話題になりにくく、最近の若い世代の人にはそれほど知名度はなかったりします。(ちなみに紅白歌合戦の初出場は2012年)

 ですが、テレビに出ないだけで、世界で、特にアジア圏において精力的な活動をし、現在でもMISIAさんを知る人の間では絶対的な評価を確立しています。

 MISIAさんが凄いと思うのは、その卓越した表現力です。
 10代の頃から黒人シンガーの指導を受けていたというMISIAさんの歌唱力は、デビュー時からかなりの完成度がありましたが、今ではそれにクラシック的な歌唱法を取り入れて磨きがかかり、世にいる数多のJ-POPシンガーとは一線を画す、圧倒的なスケールの大きさを感じさせます。

 MISIAさんの歌から感じるのは、多様できらめくような色彩感です。
 広大なキャンバスに多彩な色で描き上げた絵画のようでいて、その線や点、つまり歌い上げられたフレーズラインの一つひとつ、言葉の一つひとつが、まるで命を吹き込まれたかのように瑞々しく動き、映像のように光彩を放っています。

 特にすごいと思うのが、一つのフレーズや言葉を発する時の発声のタッチやニュアンス、そして音のリリースや切り方までも、すごく精密に使い分けられていることです。
 そして声の音質や響きが、良い意味で一定じゃない。
 歌唱技術の高い歌手といえばオペラ歌手がいますが、クラシック音楽の性質上、技術が高くても声の質感はある種均質なところがありますが、MISIAさんは、R&Bらしいブルージーでくすんだ色の声や薄い色の声、そしてクラシック的な響きの透明な声などを織り交ぜ、絶妙に使い分けています。

 そういう技術を正式に学んだり意識して使い分けているのかはわかりませんが、いずれにしろ、MISIAさんが思い描くアートの表現の結果として、そうした選択がなされ、それを声にして音楽に変えられる技術を持っているのです。そして、その引き出しが非常に多く、そして選択が絶妙すぎる。

 レコーディング音源もいいですが、MISIAさんの「らしさ」の真価を発揮するのはライブでしょう。
 ライブでも全く乱れない高い歌唱力の高さはもちろんですが、より「攻めた」表現に圧倒されます。

 もし、MISIAさんをあまり知らない、という人や、一般的に耳にするレコーディング音源くらいしか知らない人は、ぜひyoutubeなどでライブ映像を観て下さい。

 おすすめは、中国の歌番組で歌った「逢いたくていま」!

 ⇒こちらhttps://www.youtube.com/watch?v=vZ2f_C-JQvM

 この歌の作詞はMISIAさんです。
 第二次世界大戦での特攻隊員が、家族や恋人に宛てて残した手紙、遺書を読んで作られた詞だそうです。
 ドラマ「JIN-仁-」の主題歌として依頼された曲ですが、このドラマのあらすじを読んで、命をテーマにして作ろうと思い、鹿児島の知覧特攻平和観に行かれてそれらを読んだとか。

 レコーディング音源も、他のライブも素晴らしいですが、中でもこの時のライブは際だってすごいと思います。
 とにかく、圧巻の表現とスケール。壮絶。
 ほんと、泣きますよ……

 これほどの歌い手は、今の日本ではMISIAさんをおいていないでしょう。
 いや、日本の歌謡史上でも屈指のパフォーマンスではないかと思います。

 僕なんんかが応援しなくとも絶対的な評価を確立している人なので、より多くの人に知って欲しいとかそんなおこがましいことは言いませんが、音楽で感動したい・歌で震えたいという人は、ぜひご覧になられることをおすすめします。
 

 


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