銭の戦争

 少し前のドラマですが、めちゃくちゃ面白かった。
 まあ、ストーリー自体はところどころ無理ありすぎ、って感じの部分はありましたが、ドラマと思えば容認して楽しめるライン。

 何より、キャスティングが素晴らしい!
 主人公の白石を演じた草gさんの演技力は定評ありますが、個人的にはこの作品については、まあまあくらい。
 もうちょっと、陰影がつけば良かったかなあ…。
 なんか、結局、良い人なんでしょ? 的な雰囲気がずっと抜けきれない。
 表情はいいけど、喋り方が…。ダークな時に、ダークになりきれてない。

 秀逸だったのは、何と言っても渡部篤郎さんと木村文乃さん!

 以下、ちょっとネタバレ的要素もあるので、これから観ようという人はご注意ください。

 あやしい街金の社長を演じる渡部さんの演技は、このドラマでは過剰演出気味ではあるけれど、気安いところは本当に気安く、冷酷に感じさせるところとことん冷酷、ムカつく時は心底ムカつく、このドラマの世界観とエンターテイメント性を最大限に引き出した、見事な立ち回りでした。

 地味な役柄も演じられるのを知っているので、余計にその演技の幅に驚かされます。
 
渡部さんの腹黒さ満点の演技によって、思わず主人公に感情移入したくなるという、まさに理想的な助演ぶりでした。

 そして、木村文乃さん…
 これは惚れる。

 いや、見た目とかじゃなくて(笑)

 気位の高そうなお嬢様ぶりを、見事に演じきっていました。
 本当に、割り当てられているキャラクターイメージをそのままに感じさせ、それ以上に魅力的でした。

 いかにも「いいとこ」の育ちっぽい、天然の上から目線を感じさせながらも、嫌味にお高くとまった感じにはならず、「ただ世間知らずなだけで、きっと根の性格はいいんだろうな…」なんて妄想をさせる、絶妙な話し方・表情・そして、時折"わざと"見せる素敵な笑顔。

 そしてそれが、ストーリーの進行とともに、ドライでクソ真面目で融通の利かなそうな、気丈な人間として振る舞うように。
 でもそれは、無理して、頑張っちゃってそうしてるのを感じさせる、ギリギリの演技。
 見事にハマってました。

 このドラマの木村文乃の演技を、表現の幅が狭いとか、たまたまキャラに合ってただけ、と評する人がいるみたいですが、それは違うと思います。

 正直僕も、途中まではもしかしてそうなのかな? たまたまこの役と相性が良いだけなのかな?と思ったりもしましたが、終盤でそうでないことがわかりました。

 というのも、この強がっているお嬢様が、「絶対最後には主人公に甘えて泣きつくんだろうな〜」というストーリー展開は読めていたので、その場面をどう演じるかを期待して観ていて、いざ終盤にそのシーンがやってくると、一瞬で、とてつもなく可愛い、ただの女の子に、見事なまでに変わりました。

 そうなる展開が読めていただけに、その瞬間をどう演じるのか? ウソくさくなるんじゃないか?? なんて、どこか斜に構えて観ていたのですが、実際のそのシーンでは、良い意味で期待を大きく裏切られる「ただの女の子」っぷり。

 それまで無理をして繕っていた「強い女」バリアーが崩壊し、弱音を吐いて主人公に泣きつくその演技は、愛らしさすら覚えるほどでした。

 別に、長い演技をしたわけでもなく、ほんの少しの言葉と、一瞬の表情でしたが、強く気高いふりをしていても、実はただの女の子だったという、この一瞬の「素顔」を見せるために、それまで仮面のような表情をあえて作り続けていたのがわかります。

 そしてそのシーン以降、まだ気丈な女性に戻るも、どこかふっきれた、自分に無理しない「本当の大人」へと成長した姿を演じ分ける木村さんに、ひたすら惹きこまれました。

 そして、そんな二人の間で危なっかしい人生を歩む草gさんの、その三人の演技を観ているだけでこのドラマを観ている価値があります。

 あと、意外だったのが元AKBの大島優子さん。
 正直、ほとんど期待していなかったのですが、「できるじゃん!」と思いました。
 最後の号泣シーンを除いて(笑)

 いやほんと、周りの演技派俳優達に囲まれながらも、なかなか違和感なく演じられていたと思います。

 ただ、ネットでも大不評ですが、最後の泣きシーン、ありゃ、だめでしょ(笑)
 せっかくのそこまでの演技が全て台無しですよ。
 元アイドルで気を遣ってるのかも知れないけれど、さすがにあれは監督もはっきり言って撮りなおせばよかったのに、と思います。
 もったいない。

 そんなわけで、トータルではなかなか良いドラマでした。
 

 


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