ニトリがアパレルに参入するというニュースが出ていました。
ニトリのアパレル参入
ポジショニングは、ユニクロ以上・百貨店未満。ネットでは否定的な意見が多いですが、僕は結構楽しみにしています。
今、アパレル業界は非常に苦しい時代にあるので、相当険しい道だろうことはわかります。
でも、すでにテスト店を出していて、そこで手ごたえを感じての決定らしいので、それならば、どのような手腕を見せるか楽しみというわけです。もっとも、レディースらしいので僕はターゲットには当たりませんが、レディースで成功すればメンズにも進出してくると思うので……
家具類を買うなら、ニトリはなかなか使えます。
デザインと品質を考えてあの値段なら、他社と比べる限り、いいポジショニングだと思います。
例えば、照明器具で同等商品で比較すると、家電量販店やドンキと比べても同じかむしろ安かったりする。
ニトリのコスパって、結構すごいと思いますね。家具って、良いものを買おうと思うと本当に高い。
20代の頃はドンキなんかで安いのを買ったりもしたけど、チープでお洒落にはほど遠い。
最近は北欧の家具が流行ってますが、ちゃんとした物はたいがい高い。
IKEYAが北欧家具を安く売ってますが、お手頃価格の物は相応に作りがチャチくてすぐ壊れるっぽい。そうなると、無印とかニトリに目がいきます。
ただ、無印は意外と安くない。パっと見はナチュラルテイストでお洒落っぽくても、よく見るとそんな丁寧な仕上げでもなく、ディティールはしょぼい物が少なくない。ネットではニトリより無印のほうがオシャレだなんて書き込みが多いが、本気で言ってるのだろうか……?
もちろん、無印には洒落たモノは沢山あるし、僕自身も利用することはあるので、悪いと言っているわけじゃあない。ACTUSやUNICOの方がお洒落と言われたらその通りだけど、ニトリと無印ではそんな差があるとは思えない。
ちゃんと探せばニトリにだって、洒落た物は沢山ある。……というか、家具類を単体でお洒落かどうかを語るのは、重厚なクラスならともかく大衆価格レベルでは的外れで、コーディネート次第だと思います。
たぶんこれは、ブランディングによる、単なるイメージだと思います。
無印は、見せ方が本当にうまい。先ほど書いたように、家具類ではよくよく見ると結構雑な作りだったり、衣類なんかも品質が微妙だったりするのに、無印は全体的にお洒落なイメージがあります。
これはやっぱり、堤清二氏の血を受け継いだブランド作りにあるんだろうなあと思います。一方、ニトリは、個で見るとすごく良い物も置いているのに、ある意味チープなものもラインナップしている分、売り場には統一感がなくて、全体として上質感が薄れてしまっています。
品質も、安いものは相応の品質なので、安いものばかり買っていると、作りのチープさや劣化の激しさに、ニトリはだめだ、という気持ちにならなくもない。
あと、物が良くないってのはわかる気がしますけど、それを言ったら無印やユニクロもそうです。
お手頃価格で商品構成しようとすると、デザイン料や製造工程、染色などの加工費をコストダウンせざるをえないので、柄物が微妙になるのは仕方がない。デザイン性が高くてお洒落な家具を売る店は、相応に高い。
ニトリは、そのポジションは狙ってないと思います。ただ、そいういう点での見せ方が上手なのが無印ってことなんでしょうね。
ブランド自体をシンプルでコンサバなテイストにしているので、無理に柄物に手を出す必要がなく、シンプルなものばかりを並べていながらも、お洒落感を確立しているわけですから。でも、ニトリで例えばホワイトオークを使っているようなレベル以上の品ばかりを選んだら、十分にお洒落な空間を作れると思いますよ。
あと、ニトリの食器類なんかも悪くない。デザイン豊富で、安い。
これも、雑多に選ぶとよろしくないですが、ちゃんと自分でコンセプトを決めて、統一感を持たせてチョイスすれば、その辺のお洒落なカフェと同レベルのコーディネートは可能です。……で、アパレルの話から逸れたと思われるかも知れませんが、以上のことを踏まえて、ニトリでも上手に商品構成を組めば、十分に勝算はあるんじゃないかと思うのです。
アパレルでユニクロ以上百貨店未満のポジションって、ぶっちゃけセレショですよね。
セレショと言っても、本格的なインポートブランドを取り扱う本来的な意味でのセレショではなく、セレオリ販売がメインとなった、現在の主流を成しているセレショのことです。しかもレディースとなれば、商業施設に行くと死ぬほどある超激戦区ですね。
けど、レディースだろうとメンズだろうと、その価格帯って、一番不透明でカオスなゾーンでもあると思うんですね。
ユニクロやH&M、ZARAといったファストファッションレベルになると、まあ品質は想定通りです。
シンプルなものなら品質は価格相応、デザイン性の高い商品はたいがい最低レベルの質。けど、セレショの商品って、当たり商品と外れ商品の混在が激しく、それも値段やデザインと必ずしもリンクしない。
平気で一万円とか値札をつけながら、質はファストファッションレベルの安っぽさだったり。
でも、あれ? これ安くない? と思って買ったら、しっかりしてて着心地も良くて、本当に大正解だったり。どういう基準で商品企画し、値付けしているのかよくわからない。
目で見える縫製や手触り、試着である程度の判断はできますが、それでもやっぱり、劣化が早かったりするのを完全には見抜けません。聞くところによると、セレオリには、すごい原価の安いぼろ儲け商品と、原価ギリギリの商品と色々混在しているそうな。
これは飲食でもあることだけど、飲食とアパレルでは消費の仕方が違うから、どういう考えで価格設定をしているのかよくわからない。参入できる余地があるとしたら、ここじゃないかと。
ユニクロや無印のデザインでは満足できないけど、百貨店で買おうとは思わない。
でもセレショで失敗するのも嫌だ、という層に対して、確実……というか、「期待通り」の質を提供する店。高い物は高いなりに。
安物は安いなりに。「失敗した」と思わせない店、そこはアパレルではニッチなように思いますね。
アパレルの巨人ユニクロも、中価格帯では弱いと思う。
十数年くらい前かな? 中心価格帯を引き上げたら「ユニクロのくせに高い」と市場から猛反発を受け、業績が悪化した経験を踏まえてのことだと思いますが、その結果、中価格帯の商品層は手薄で、逆に「惜しい」と思わせる部分が多々あります。例えば、ウールカシミアのチェスターコートが二万円以下とか、ほんとすごいと思うけれど、デザインやディティールがあと一歩物足りない。
コートなんて、そう頻繁に買い替える前提で買わないので、どうせなら「これぞ」という物が欲しいと思うだけに、あの何の飾り気も洒落っ気もないコートでは、どうしても手が伸びない。
ユニクロの実力なら、裏地をキュプラ100%に、ボタンを水牛ボタン、そして生地の折り返しやラペル部分にもう少し格好良い仕上げを施しても、3万円くらいで作れる気がするし、そんなコートを発表したら、僕は間違いなく買います。
これって、セレショなら6万円以上するレベルの商品です。……でも、ユニクロユーザーの多くの人は買わないでしょう。
ユニクロの支持層の大半は、コートに3万円なんて出そうと思わないし、ディティールやラグジュアリー感を求める人は、「ユニクロ」ブランドじゃあ納得できない。
これは、ユニクロブランドの、もっというと、ファーストリテイリングのブランドの限界だと思います。
ファーストリテイリングもそのことがよく分かっているから、ユニクロをそのゾーンには突っ込ませないのでしょう。けど、結果的にそのゾーンがニッチになっているのは事実だと思うのです。
ユナイテッドアローズのグリーンレーベルや、ビューティ&ユースに近いゾーンですね。
でも、グリーンレーベルも、ユナイテッドアロ―ズのメインラインがあるが故に、高品質なものを安価に売れない……いや、売ろうとはしないジレンマがあるのでは? と思ったりもします。
なんか微妙というか、「これでこの値段? この値段ならもうちょっとちゃんと作れよ」っていう感じの、ユニクロとは逆の意味で惜しい商品が多い。
そうしたちゃんとしたモノになると、UAのメインラインでもっと高く売る商品になってしまうのかなあ、と。だからここは、新進ブランドでなければ確立できないゾーンのように思うし、そこに上手くニトリが入り込めば、アパレル業界に新しいポジションを確立できるのでは? と思っています。
ニトリが、どのようなブランディング・商品構成で攻めてくるのか、楽しみです。