「スコッチグレイン」というのは、ヒロカワ製靴という日本の革靴のメーカーのブランドです。
スコッチグレインの革靴
僕の好きな靴のブランドです。スーツと合わせる革靴は、過度にこだわる必要はありませんが、そこそこのものを履くのがおすすめです。
日本には「足元を見る」という言葉がありますが、これは昔の日本で駕籠屋さんが、旅人の足元の草履のくたびれ具合を見て、疲れてそうな相手には高い値段をふっかけてたのが由来だそうです。
ただ、ビジネスマンの間では別の意味で「足元を見る」ことがあります。
よく「靴を見ればその人となりがわかる」なんて言ったり、一流のホテルマンは客のレベルを見極める時に靴を見る、なんて言ったりもしますが、これは、一見こぎれいな格好をしていても、靴がボロボロだったり、汚れたままだったりするようなら、実はたしたことない人と思われる、という話です。何故「靴」で判断するのかというと、一般に男が服装や持物に気を遣う順序として、服の上下、ベルト、鞄や時計、という順番できて、靴は最後になる人が多いので、靴まで気を回している人はレベルの高い人ってことになり、その裏返しとして「靴を見る」ということになったようです。「馬脚を現す」に似てますね。
ただ、それを逆手にとって「服は安物でも靴だけは高級品を履け」なんてファッションアドバイスをする人がいるので、こうなってしまうと本末転倒です。いくら靴が上等でも、ファッションの大半を占める服のほうが安っぽかったら、ただの「靴好き」と思われてしまうだけです。
とはいえ、ピンポイントで指摘されてる要素を疎かにするのもなんですから、そこで「靴」をちゃんとする上での最大のポイントは、「革靴はやっぱり本革」ということです。
合皮の安物はだめだと思う。これは鞄やベルト、財布、名刺入れなど、革製品全般に言えることですが。というのも、合皮は劣化すると必ずハゲます。みすぼらしくなります。それがよろしくない。
そもそも合皮というのは皮ではなく、布を固めて表面を樹脂でコーティングして革っぽく見せたものです。
なので、使っているうちに必ず表面の樹脂がシワの部分から割れ、ハゲて灰色っぽい中の地が見えてきます。
大事に使っていたとしても、樹脂は経年劣化するので、数年で自然に割れてハゲます。
つまり、合皮の靴は完全に使い捨てなのです。僕も20代の頃はあまり気にしませんでしたが、本革はそうならないのを知ると、見え方が変わってしまうんですよね。
合皮の靴やベルト、財布などで、そうしたハゲたものを見ると、「劣化した安物」ということがすぐにわかってしまう。
値段で人を評価するつもりはないし、といって5万も10万もするような高級靴を買うべきとは思いませんが、本革の靴なんて2〜3万円くらい出せば買えるのだから、ちょっと頑張ってみればいいのに、という気になります。というわけで、そこでおすすめするのがスコッチグレインの靴です。
スコッチグレインの特長は、オールハンドメイドの丁寧な作りで、日本人の足に合った形で、何より革質が良く、それでいて安価なことです。
修理代も他社製品に比べて格安なので、長く使うことを考えるとさらにお得感があります。中でも一番のおすすめが、スコッチグレインの「シャインオアレイン」という雨用のシリーズ!
本革の靴は雨に弱いので、革靴の品格を持ちながらも雨に強いシャインオアレインは、非常に使い勝手が良いです。(税込みで3万円ちょっとくらい)
革をなめす時にフッ素を混ぜこむという特殊な作りによって撥水加工しているそうで、そのためか、ちょっとくすんだような色合いで、革の上質感は落ちるため、靴マニアからすると納得出来ないだろうと思いますが、靴で見栄を張りたいとか、マニアでなければ十分過ぎる素晴らしい靴だと思います。何よりラバーソール(ゴム底)なので、レザーソールより歩きやすく、雨の日に気兼ねなく履けるのがすごく便利です。
防水スプレーなんてしなくとも、全く浸みてきません。というか、いわゆる高級革靴は、たいていレザーソールです。
レザーソールは、歩きやすい靴かというとむしろ快適性は低く、濡れた床ではめちゃくちゃ滑るため、雨の日には使い物になりません。
そんな靴がなぜ高級品として発達したのかというと、ヨーロッパは日本と違って階級社会なので、高級靴を履くような階層の人々は、雨の日に外を歩き回ったりしないそうな(笑)だから、合理主義のアメリカでは、革靴だけど歩き回っても疲れない、ジョギングにも耐えられるというようなROCKPORTが生まれるわけです。
それを考えると、長時間歩き回る営業職のような職種の人が高級な革靴を履くのは、本来不釣り合いなファッションだと思います。
といって、合皮の安物靴はすぐにみすぼらしくなってしまう。
だから、マニアに走るわけでもなく、実用性の高い靴となると、スコッチグレインのシャインオアレインが一番のチョイスになると思うのです。単に上質な靴を求めるとしたら、スコッチグレインのオデッサクラス(税込みで4万円ちょっとくらい)を選ぶと良いでしょう。
スコッチグレインの店員さんいわく、そのクラス以上の靴には、イギリスやドイツの高級靴にひけをとらない、同レベルの革を使ってるそうです。
外国製の靴でスコッチグレイン並の質の靴を買おうとすると、数万円はプラスしないといけないと言われています。靴に全く興味がない人からすると、4万円でも十分高級だと思うかも知れませんが、いわゆる外国製の高級靴となると、安くとも5万円くらい、ジョン・ロブやエドワード・グリーンといったハイクラスなブランド靴は10万を超えるので、4万円というのは、本格的な革靴としてはかなりお手頃価格です。
ただ、本物の革靴なら長持ちでコスパが良いかというと、残念ながらそうではありません。
高級靴を買う人はよく、「安い合皮の靴を1年そこらで履きつぶして何度も買い替えるくらいなら、上質な革靴は10年以上持つのでコスパが良い」と言いますが、単純な金額だけで見れば、安物の靴を頻繁に買い替えた方が安いと思います。確かに上等な革靴は長持ちさせられますが、靴はどうしても消耗するので、交換・修理が必要になります。
また、長持ちさせるなら一日履いたら2日休ませて、同じ革靴を連日履いてはいけない、なんてのも重要なので、結局何足も必要になり、そうなると決してコスパは良くありません。ただ、それでも僕がスコッチグレインを推すのかというと、作りの違いもあるのです。
安物靴は、基本的に接着剤で底をはりつけています。
そういう靴って、ある日突然底がパカっと外れたり、劣化の仕方が酷い。
しかし、本革できちんとした製法で作られた靴なら、そうした劣化の仕方はしません。
合皮のように表面がハゲたりもしません。
スコッチグレインの靴は、全てきちんと作られています。残念なところとしては、デザインに色気があまりないことと、甲が少し高いことです。
靴マニアの間では、そこで評価が分かれるようです。僕の場合は、基本的に仕事にはジャケパンスタイルで行くので、そもそもかっちりした革靴をそんなに頻繁に履きません。
フォーマルな革靴はそれこそフォーマルな場でしか履かないため、そういう時の靴となれば、派手さやラグジュアリー感は不要だと思っています。
それに何より、ここは日本なので、例えば何かの会議の後に、座敷や掘りごたつスタイルの飲み屋に行ったり、お通夜などで室内にあがったりと、何かと靴を脱がなくてはならない瞬間というものが出てくる時があります。
その際、スコッチグレインは甲に少し余裕があるため、着脱が楽なのです。(ただのめんどくさがりなだけですが…)そんなわけで、デザインは地味でも質は高級靴と変わらないスコッチグレインが、一番僕に合っているわけです。
あと、基本的に海外のブランド品は、関税やら何やらで、基本的にかなりぼったくられてます。
それに、せっかく日本に優秀なメーカーがあるのに、わざわざ外国にお金を落とすのは何だか悔しい気持ちもします。そんなわけで、僕はこれからもスコッチグレインを贔屓にしていこうと思っています。