クレームに屈しないためには積極的に情報発信する

 日本は企業でも役所でも、クレームに過剰反応し過ぎだと思います。
 ニュースを見ていて、確かに「こんな批判されることくらい予想できなかったのか?」ということもあるけれど、「え? そんなクレームくらいでとりやめるの? これって誰得??」と思うような対応も目立つ。

 昔から、顧客満足を高めるマーケティングでは、一件のクレーム(不満足な顧客)にはその何倍ものクレーム(不満足な顧客)が存在する、と言われてきたし、確かにそうした側面はあるでしょう。

 しかし、肯定していることには意見なんて出さないのが普通です。
 「私は貴社の取り組み路線を評価します」なんてメールをいちいち入れる人なんてまれです。
 だから、現状を肯定している層の方が大きい場合だって有り得る。
 なのに、たまたまクレームを入れてきた声の大きい輩の意見を、まるで世間の声のように受け止めて翻弄されるのは、間違っているを超えて情けないように思う。

 クレーマーしかり、学校のモンスターペアレンツしかり、そうしたのが増えた背景として、現在の社会構成がネットジェネレーションやメールに慣れた人が増えたから、という人が多いですが、現象の本質はそこではないように思います。

 それを考察するために注目すべき点は、「ライトなクレーマー」と言うべき層の増加です。
 一見するとただのサラリーマンや主婦で、素行の大半はまともっぽく、話や常識が通じないわけではなさそうなのに、 特殊な要求をゴリ押しして来たり、従業員に暴言を吐いたり、泣くまで謝らせようとしたり、ゆすり・脅しまがいのことをしてくるケースが本当に増えているということです。

 明らかに非常識なクレーマーであれば、毅然とした対応が取り易い。
 しかし、普通っぽい人から激しいクレームを受けると、きっぱりと拒絶はしづらかったり、どう考えても理不尽にしか思えないのに、こっちが悪いのか?? といった錯覚を引き起こしたりしてしまいます。
 
クレームのメールや電話にしても、罵詈雑言を並べ立てられたら「ああ、こいつはクレーマーだ」と割り切れますが、常識的な文章だったり、言葉遣いが丁寧で常識的だったりすると、たとえ理不尽な要求であっても、つい考えさせられたりしてしまいます。

 こういう、ライトなクレーマーというべき手合いの対応は、なまじまともっぽく見えるだけに無下に扱えず、本当に厄介です。

  僕は、この現象から現在の問題の本質が見えると思います。
 何故こうした「ライトなクレーマー」が増加したかというと、その背景にあるのは、インターネット、特にSNSの普及によって、何事も「自己正当化」しやすくなったことにあると思います。

  日本人は、良くも悪くも「ステレオタイプ」の傾向があり、とにかく「世間」を気にし、右に倣えの性質があります。
 
インターネットがなかった時代は、「世間」の実態を知る手段は「身近な関係」しかありませんでした。
 身近にかかわる人間関係という、ごく狭い範囲だけが基準になるため、未知の現象に対しては実像が見えにくく、見えないからこそそれに恐れ、自分の考えを世間と同一化して正当化するのは容易ではありませんでした。

 しかし、インターネットで世間の様々な声が簡単に見えるようになって、世の中が変わりました。
 例えば、「カスタマーハラスメント」が話題になったとして、それで自分を省みる人が増えるかというとそうはならず、むしろ自分と同じ考えの意見を他の場所に見つけることで安心するようになってしまったのだと思います。

 例えば「yahoo知恵袋」というQ&Aサイトがありますが、明らかに非常識な内容で「私の考えは間違ってますか?」と質問したとして、それを批判する回答が10件入ったとしても、たった1件、同調する回答があると、それをベストアンサーにして、「私に共感していただける方がいて安心しました」となるようなケースをよく見かけます。
 「自分の間違いに気づかされました」というケースは圧倒的に少数です。

 まさにゲーテの言葉、「人は、わかることだけを聞いている」  です。

 人間は、「悩み相談」と称しながらも、本音は自分の同調者を探しているだけ、という性質が強い生き物です。

 それでも、ネットがなかった頃は、世間の声がわからなかったので、上司のパワハラやセクハラもそうだし、学校の教員の非常識な指導に対しても、「それが世の中の常識なのだろうか」と思って、従わざるを得ませんでした。

 テレビの芸能人やコメンテーターの発言の影響力が大きかったのも、その是非を確認する場が少なかったからでしょう。
 むしろ、有名人が言うのならそうなのかも知れない、と思い込まされてしまったり。
 ただ、
それが「殿様商売」を許し、客側に「泣き寝入り」させたり、企業や組織でパワハラやセクハラが横行したり、マスメディアによる情報操作を容易に許した原因なので、 その時代が良かったというわけではありません。

 しかし今は、非常識な考え方であっても、それがたとえ少数でもネットを通じて共感者を見つけやすくなったことで、悪質なクレーマー気質の人間でも自己肯定を可能にしてしまったのだと思います。
 「バカッター」や過激なyoutuberも同じで、どれだけ炎上しても真似する輩が後を絶たないのは、同調者を生み出しているからです。

 これに対抗するにはどうしたら良いのか?
 
となると、現在のネット社会はもう後戻りしないので、発生すること自体は抑えられません。
 となれば、企業も組織側も、ネットを利用して自分の考え方やスタンスについて積極的に情報発信をし、その反響を事前確認し、自己のスタンスを固め続けることだと思います。
 
言われてから対応しているから、右往左往し、ブレてしまうのです。

 twitterでもなんでも活用し、自社の企業スタンスや考え方を、聞かれていなくとも先回りして発信していけば良いのです。
 そうすれば、反響は勝手についてきます。

 アンケートでもなんでも、サンプル数は多い方が有効性が高いのと同じで、たった数件のクレーム程度を重く受け止めるのではなく、言われる前から世間に問い続け、普段から何十、何百という世間のコメントを貰っていれば良いのです。

 大きな企業ほど、イージーな情報発信によるリスクを意識してか、気軽にSNSやYoutubeなどを使わない傾向にありますが、これからは、リスクがあるから控えるのではなく、そこに本気で向き合って対策をしていく時代だと思います。
 それも、単なるクレーム対応のためではなく、市場を調査・確認するマーケティングツールとして、ブランド形成やトレンド発信のツールとしてウェイトをかけて活用していくべきでしょう。
 それを、中途半端に担当者任せにしたりするから、効果が薄かったり、分析が主観的だったり、迂闊な配信で問題を引き起こしてしまうのだと思います。

 ホリエモン氏や元ZOZO社長の前澤友作氏なんかは、聞かれなくとも自分の考えをばんばん発信するので、その分叩かれることも少なくありませんが、そうやって絶えずマーケットの反応を確認しているからこそ、支持者を集め続けられ、成功し続けているのだと思います。

 

 


 →TOPへ