スガシカオ

 個人的にリスペクトしているアーティスト。
 どういう点に?というと、曲も好きですが、一番の理由は「正直なところ」です。

 アーティストに対して「正直」って変かも知れませんが、スガさんに関しては、その「正直さ」が、作品の重要な要素になっている気がするからです。

 スガさんは、三十歳になってデビューしたという珍しい人です。
 それも、目が出ずに三十歳になったわけではなく、大学卒業後にサラリーマンをやっていて、三十前になって脱サラをしてミュージシャンになった人です。

 音楽の道に進むのが遅くなった理由として、スガさんは「自信がなかったし、傷つきたくなかったから」と言っています。

 これって、すごくわかる。
 スガさんは、十代の頃からギターを習っていて、自分の音楽の才能にはそれなりに自信があったそうです。

 ですが、それで食っていけるか?
 というと、そこまでの自信はなくて、下手に挑戦して、その自信が打ち砕かれるのが怖かったから、音楽の道には進まなかった……いや、進めなかったそうです。

 才能なんて、使ってみなければ自信があるもないもないから、おかしな話に思われるかも知れませんが、そんな小さなプライドを持っているのが人間ってものです。
 僕自身もまさにそうでしたから……

 ただ、スガさんは、結局サラリーマン生活に満足することが出来ず、貯金をして、三十前になって会社を辞めて、一人で楽曲作りに籠ってデモテープを送り、それがオフィスオーガスタ(山崎まさよしさんやスキマスイッチさんなどが所属されている事務所)の社長のお眼鏡にかない、めでたくデビューできたそうです。

 サラリーマンを辞めることを決心された理由も面白くて、「俺がミュージックシーンに出て行かないのは音楽業界の損失だ」と思ったからだそうです(笑)

 ……で、同じことを実は僕も思ってたりして(笑)
 とはいえ、
スガさんと違って、僕の場合は会社を辞める度胸がないまま現在に至るわけですが、今でも心の中では、自分が音楽業界に進んでたら、絶対ヒット曲を飛ばして、新しいドラミングのスタイルを生み出してたのに……なんてことを妄想してたりします(笑)

 結局、自信あるんだか、ないんだか、って感じですが、そうしたことを正直にインタビューで語るスガさんに、僕は何とも言えない魅力を感じるのです。

 その他にも、確か「黄金の月」という曲のことだったと思うのですが、その曲を作った時スガさんは、「俺はすごい曲を作ってしまった」と思ったらしく、その曲がリリースされる前の日の晩は、「どうしよう、日本の音楽シーンが激変する」と思って、興奮して眠れなかったほどだったそうです。

 スガさんは「スライ&ファミリーストーン」がお気に入りなことに象徴されるように、ファンクをこよなく愛する方なので、作られる曲には一種独特の作風があります。

 そのスガさんが、最高の自信を持って世に送り出した曲が「黄金の月」でした。

 そしていざ発売日。
 ……何も起こらない!!
 どころか、クソも売れなかったそうです(笑)

 そんなことを考えていたスガさんも面白いですが、そうしたエピソードをインタビューでばんばん語るスガさんが面白いと僕は思ったんです。

 アーティストなんてのは、えてしてカッコつけが多く、何でも都合よく言い換えたり、後付けのように武勇伝を語る人が多い中、スガさんは、ダメなことや私心みたいなのをストレートに語ります。

 もちろん、「カッコつける」ことも一つのスタイルであり、その美学が個性的なアートを生む力だったりするわけですが、スガさんの場合は、そういう正直な性質が、味のある詞を生み出すんだろうな、と思うんです。
 
虚構ではなく、キャッチーなウケ狙いでもなく、自分のやりたいこと・本音だから、純粋に自分の内面の言葉を詞へと昇華させられる。
 ほんと、ファンキーです。

 スガさんは、詞を書くときはもれなく酒を飲んでいるそうです。
 素のままでは書けないらしく。それもまた、スガさんらしさなのでしょう。
 確かに、冷静なままだと邪念が入りやすい。酒が入ると本性が出るといいますし。
 だから、本当の自分を出すために酒の力を借りているのだろうと思います。

 そのやり方が人によっては合う合わないあると思いますが、
 そうやって「本音の自分」を楽曲に変えるからこそ、そこに魂がこもり、ソウルフルな歌になっているんだと思います。

 メジャーデビューした頃は、信じられないくらいモテまくったそうで、「いったい人は最高で何股まで掛けられるんだろう」なんてしょうもないことを考えたそうですが、そういう個人的な価値観の部分については僕は好きじゃないですが、そんな下衆なことも正直に言えるところは、スガさんらしさとして評価しています。表面だけ誠実なフリして実は遊びまくってるほうがよっぽど下衆だし。

 概念的な評ばかりになってしまいましたが、スガさんの曲の魅力は、詞とコードです。
 特にコードは、ほんと面白い。
 ジャズギターを習ってたことと、ファンクをやっていたからでしょうね。
 普通のコードじゃない。テンションコードやディミニッシュを多用していて、普通のコードで弾いたんじゃ、スガさんらしさが全く出ない。

 詞は、言葉の選び方がいいですよね。
 何といっても有名なのは、SMAPさんに提供した、作家の村上春樹さんも激賞されたという「夜空ノムコウ」。
 たとえば、「マドをそっと開けてみる。冬の風のにおいがした」とか、何だろう、すごくしみる。
 J-POPの詞って、恋だの愛だのといった内容が九割を占めていますが、この詞は違います。
 人が大人になって、大人になっているはずだけど、本当に思っていた大人になれているんだろうか?本当の大人って一体なんだろう?なんて思う、誰もが通る道、青春の残り香を捨てきれないまま立ち止まってしまう、青春の終わりの瞬間のようなものを切り取り、素晴らしく的確に、かつアートとしてポエミーに描写しています。

 好きな詞を書き出すときりがないですが、断片的なものとしては、「午後のパレード」にある、「財布の中のセンチメンタル」とか、「Tシャツのロックスターは昔よりずっと 疲れた顔で汗ばんでいる」とか。
 何なんでしょうね。うわー、やられたーって思ってしまう。

 キャッチーな曲が少ないため、バカ売れしないタイプのミュージシャンだと思いますが、ファンクやジャズが好きな方ならきっと何か感じる部分があると思うので、知らない方は是非聴いてみてください。
 

 


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