古い映画

 僕は、古い映画(洋画)がそれなりに好きです。
 映画マニアというわけではないのですが、子供の頃、父親が深夜にやっている洋画をビデオに沢山録画していたので、ヒマな時にそれを観ているうちに、古い映画の魅力を知ったわけです。

 深夜にやっている洋画は、吹き替えでなく字幕だったことも、好きになった理由の一つです。
 子供の頃に洋画を観る機会となると、普通は日曜洋画劇場などが多く、そうすると吹き替えが中心になりますが、字幕で観ると、元々の俳優の演技のテンションがストレートに感じ取れるので、吹き替えよりも断然良いからです。

 覚えているものとしては、「第三の男」「汚れ無き悪戯」「荒野の七人」「グレンミラー物語」などなど、今の若い人は知らないような映画(というか僕の同世代の友達も知らない)を色々観たわけですが、その時代の映画って、昨今の映画にはない、独特の魅力があります。

 中でも強く印象に残っているのが、「第三の男」のラストシーンです。

 第三の男のラストシーンは、映画史上屈指の名ラストシーンとして有名ですが、当時の僕はそんなことまるっきり知らず、たまたま家にビデオがあったから観ただけでしたが、二十年以上経った今でも忘れられないシーンです。

 ストーリー全般については、正直観ていた当時も、そんなに引きこまれるほどのものでもなく、むしろ釈然としない部分も多くて、微妙に思ったくらいです。
 純粋にサスペンス映画としては、近年の練りこまれた作品のほうがずっと上だと思います。

 しかし、第三の男の魅力は、ストーリー自体というよりも、映像全体が作り出す雰囲気とか、人間模様にこそ本質があります。
 有名なラストシーンも、実はもともとのシナリオにはなく、映画を制作する中で作られたものらしいのですが、観ていた僕にとっては、むしろこのラストシーンを見せるために、それまでの90分のドラマを用意したのではないか?と思ったくらい強烈に印象的でした。

 ふーんと思いながら観ていた映画が、そのたった一つのラストシーンによって、僕にとって忘れ得ぬ名作になりました。

 後から、第三の男のラストシーンは名場面として有名ということを知って、さもありなん、と思いました。
 とはいえ、そうした事前情報なしに観たからこそ、良かったのかも知れませんね。
 
意識して何かを期待していたら、逆に肩透かしをくってしまったかも知れません。

 最近の映画で、こうした「名シーン」というのを感じさせるのって、少ないような気がします。
 派手なアクションや、良く練られた構成、予想を覆すような展開など、エンターテイメント性は圧倒的に近年の映画の方が上だし、むしろ昔の映画にそれを求めてると、ほとんどないんじゃないかと思うくらいですが、そういうのって、「面白かった」という記憶は残りますが、頭に焼き付くような名場面、というのは意外とないように思います。
 時代性の違いでしょうか。

 でも、こうした古い映画も、なかなかいいものですよ。
 

 


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