上野樹里の演技力

 上野樹里さんは、現在の日本では屈指の演技力を持つ女優だと思います。
 
上野さんが最初に有名になったのは、「スウィングガール」という映画で、この時の演技も良かったけど、ブレイクしたのは、ご存知「のだめカンタービレ」の主人公「のだめ」役。

 僕は原作の漫画を知っていたので、正直、ドラマ化された時は、のだめがあまりに個性的なキャラ設定なだけに、実写化に向いてる漫画とは思いづらく、原作のイメージとの違和感を感じるのはイヤなので、最初は観る気がしませんでした。

 しかし、ドラマの評判があまりに良いので見てみたら、納得!
 千秋先輩役の玉木宏さんもすごく良いと思ったが、何といっても上野さんの演技が素晴らしかった。

 原作のイメージ通りというわけではなかったのですが、のだめの「天才的変人的」という個性の本質部分は見事に消化し、完成されたキャラとして演じていたと思います。

 そてに、極端なキャラであるにもかかわらず、作りものっぽさが気にならなかったのも驚きました。

 ですが、気に食わなかったのは、当時の上野さんに対する評価です。
 のだめの強烈なイメージのためか、それ以降もコメディ系の役を演じることが多かったこともあって、上野さんの演技に対して、「地をやってるだけで演技じゃない」と言う人が当時は結構いたわけです。

 いやいや、あんな「地」があるわけないでしょう。

 でも、のだめ以前の出世作であるスウィングガールズもコメディだったので、なかなかそうしたイメージを持っている人は多かったようです。

 しかし、そんな世間の評とは裏腹に、その演技力を証明したのが、2008年のドラマ「ラストフレンズ」だと思います。

 このドラマでの演技は、凄みがあるほどに素晴らしかった。
 
というか、このドラマは、主要キャストが演技派揃いで、誰も彼もが素晴らしかった。

 主演の長澤まさみさんは、それまで中途半端なアイドル女優くらいにしか思っていなかったのですが、このドラマでの演技は秀逸!
 観ていて本当に腹が立ってくるくらいに見事なまでにバカ女を演じ、DV彼氏に暴力を振るわれてお岩さんのような顔になり、それでも目が覚めない気持ちの悪さには、人気アイドルの面影は微塵もなく、本当に救い難い、頭の悪い女に成りきっていました。

 瑛太さんの演技も相変わらず素晴らしいし、錦戸亮さん、水川あさみさんの演技も素晴らしく、正直ストーリー自体は微妙なところが満載ですが、その問題を補って余りあるくらい、出演している役者たちの演技が魅力的でした。

 このドラマで上野さんが演じた役には、コメディ要素は微塵もなく、完全にシリアスなキャラです。
 笑顔を見せることすら少なく、どこか心の読めない、男勝りな空気と芯の強さをまといながら、といって鉄のように閉じた心かというと、むしろガラスのような脆さを感じさせるという、この役に求められているものを100%以上引き出して演じきっていると言えるほどの出来だと思いました。

 もはや上野さんを観ているだけで価値があるドラマでした。

 また、2013年の映画「陽だまりの彼女」も良かった!
 ここでの上野さんは、遠い憧憬の中だけに存在する、初恋の人のような儚げな女性を演じ、これものだめやラストフレンズとは全く異なるキャラクターでした。

 のだめやラストフレンズは、ともに性格のはっきりした役でしたが、このドラマで上野さんの演じた真緒のキャラは、性格的な個性は強くないので、こんな淡い色の役もこなせるんだと、あらためて上野さんの演技の幅の広さを感じさせました。

 純粋に映画作品としてはつっこみどころが多く良作とは言えないけれど、松潤のぎこちない演技がダサめの役柄にもちょうどはまっていて、そこに上野さんの魅力あふれる演技が、本当に若く初々しいカップルを観ているようで、二人の演技を追って観ているだけでも引きこまれます。

 後半に真緒が衰弱していくところは、実際に撮影開始から6キロほど痩せたそうで、もともと太いわけではないのにそれだけ痩せるのは相当な根性が必要だろうに、そういうプロ根性も立派だし、だから観ていて演技に迫力があったのでしょうね。

 最近でも2016年のドラマ「家族のカタチ」で、こじれた独身キャリアウーマン役を、ナチュラルに好演していました。
 陽だまりの彼女の役もOLで、このドラマでもOL役でしたが、完全に別人です。

 これらの作品ではもはや「のだめ」の影なんて微塵もなく、むしろのだめを観たことがなく、ラストフレンズや家族のカタチを見て上野さんを知った人が、その後にのだめ見たら、「上野樹里ってこんなバカキャラやれるんだ」と驚くことでしょう。

 上野さんって、撮影現場ではわがままだとか、マスコミの取材に対して横柄だとか、そのせいで悪い噂が流れることもありますが、そんなことはどうでもいいと思います。

 芸能化のタテ社会的な人間関係で地位を築いていく人にとっては重要なこともかも知れませんが、真の「アーティスト」であればこそ、職人的で性格が気難しかったりするのはむしろ普通でしょう。

 日本が誇る素晴らしい女優だと思います。
 
これからもどんどん活躍して欲しいと思います。
  

 


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