ヤマト運輸が値上げ

 2017年10月のニュースで、ヤマト運輸が、運賃を平均15%も上げるという。
 運賃を全面改定するのは実に27年ぶりで、未払い残業問題などを契機に、労働環境の整備を図った結果、値上げに踏み切ったようです。

 これによって、特にネット通販業者は大きな打撃を受けることになり、アマゾンも送料を4割くらい値上げすると言われいて、消費者にとっては利用しづらくなる話ではありますが、僕が思うに、こうした値上げは、どんどんすべきだと思います。

 消費者としては物価があがるのは嬉しい話ではないとはいえ、そもそも過酷な労働環境を背景に成立する格安サービスなんてものは存在すべきでない。
 
大きな視点で見ると、そうした不健全な価格破壊が、日本経済をダメにしてるのだと思います。

 企業努力によって安価に商品やサービスを提供できるようになることは、社会の発展に必要なことだと思います。

 しかし、コンプライアンスを蔑ろにすることでコストを抑えて低価格に商品を流通させるのは、そのコンプライアンスの現象面だけでなく、健全な市場形成を阻害する行為です。
 これは正義感的な話ではなくて、結局それが日本の経済社会を疲弊させます。

 何故なら、不当な経営をしている企業によって、真っ当な経営をしている企業が苦戦を強いられることになるからです。

 この問題を紐解いていくと、根が深い話であるとは思います。
 例えば製造業で、労働賃金を低く抑えることで安価に商品を製造するという手法は、大昔から世界中で当たり前の手法で、現在でも基本的には変わっていません。

 現在でも多くの日本のメーカーが、工場を人件費の安い中国や東南アジアに移して製造しています。
 ただ、貨幣価値の違いにより安く作れるだけなら良いのですが、かつてアメリカの某有名スポーツ用品メーカーが、法律が未発達の後進国に工場を作り、奴隷のような過酷な労働環境で安く製造していたことが発覚して、世界的な不買運動に発展したという有名な事件があります。

 現実的には、後進国だと労働法が貧弱で、社会保障や福利厚生の水準も低いため、色々コストがかからないからこそ安く作れる、という実態はあるとは思います。

 しかし、ネット社会になった今や、そうした後進国の製造現場の情報まで簡単に共有できるようになり、そうした国のコンプライアンスまで話題に上る時代にあって、自分の国の中で労働搾取として、どうしようというのか。

 日本の工場、サービス業、運送業のドライバーは、労働者であり、当然日本の消費者です。
 日本の消費者が適正な賃金を貰えず疲弊しきっていたら、日本経済が円滑に循環するわけがありません。

 もちろん、ヤマト運輸のドライバーの待遇が改善されたくらいで日本の経済が上向いたりはしませんが、これは日本社会全体に共通している、サービス業全般に対する扱いの傾向だと思います。

 宅配ドライバーに限らず、小売店の店員、飲食店の従業員、アパレル、保育・介護、ITやアニメの下請けなど、労働環境と賃金が見合ってない業界は多くあり、その多くがそもそもの価格設定に無理があるため、労働者にしわ寄せがいってる場合がほとんどです。

 そして、当然ながらそうした労働者も日本の消費者なわけですから、それらの層が劣悪な労働環境で働かされているといいうのは、日本経済にとって完全にマイナスです。

 ネット通販は便利だし、送料が高くなるのは、その側面だけ見れば消費者にとっては悪いニュースかも知れません。
 でも、それによって健全化される層が存在するのであれば、むしろ良いニュースだと言えないでしょうか。

 大きな視点で見れば、あまりにも安すぎる商品は、何かがおかしいと思わないといけないと思うべきです。
 それを不買運動しても焼け石に水かも知れませんが、日本国民の一人ひとりが、「安すぎるものは何かおかしい」と感じるようになっていけば、ネット全盛のこのご時勢、今回のヤマトの件のように、きっと何らかの変革やムーブメントが生まれ、広がっていくのではないかと思います。

 


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