** テーブルマナー講座 **

服装のこと

 組織や何かの行事などで、参加にあたって設けられた服装のルールのことを「ドレスコード」と言います。
 レストランでも「ドレスコード」を設定している店があって、服装が規定をクリアしていないと、入店を断られる場合もあります。

 しかし、ドレスコードを明確に設定していなかったとしても、レストランというのは、ただ美味しい料理を出すだけでなく、「非日常」(業界用語では「ハレ」という)を演出する場なので、雰囲気を大事にし、服装についても暗黙のマナーが存在します。

 これは、お店に対してではなく、周りのお客さんへの配慮なのです。

 「ハレ」とは、日常にはない、特別な場。何かの記念日、特別な日に、大事な人と、大事な時間を過ごす場。
 
全てのお客さんが、レストランをそういう目的に利用するとは限りませんが、そういう人が満足できる場でありたいとレストランは思っているし、また誰よりも利用しているお客さん自身が、そういう場であって欲しいと思っているはずです。

 例えば…

 A君は、世界で一番大切な彼女の誕生日に、気合いを入れて人気のレストランのディナーを予約しました。
 そして待ちに待ったその日。

 A君は、とっておきのジャケットとワイシャツを着て、彼女は、素敵な女性に見えるよう精一杯おめかしして、レストランに向かいました。

 そして、レストランの扉をくぐると、まるで別世界のようにきらびやかなシャンデリアが輝き、豪華に並ぶ調度品に迎えられ、まるで王子様とお姫様になったような気分に…
 
と思っていたら、ジャージのおっさんとTシャツのおばちゃんが大声でゲハゲハ笑っていたり、オラオラな柄シャツに半パンにビーチサンダルの若造が片膝立てて携帯で喋っていたら…!?

 もう、二人の気分は台無しですよね。

 だから、レストランはお客さんの服装や素行を制限することがあるのです。

 特に服装は、その空間にいる人々に、その印象をストレートに与えるので、何より先ず気をつけるべきことと思います。

 もっとも、最近では服装で入店を断るお店は減りました。多少騒いでいても何も言われない店も増えました。
 でもそれは、制限が無意味になったからではなく、バブル崩壊以降、景気が悪くなって経営が厳しいために、やむを得ず甘くなっているだけで、本来のレストランのあり方ではありません。

 中には、高級レストランにわざとラフな格好で行くことで、いかにも「普段からこういう店に行きつけてるんだ」といわんばかりに、そのほうが格好良いと思っている人がいるようですが、とんだ勘違いです。

 自分はそれで格好イイと思っているかもしれませんが、「とっておき」のつもりでレストランに来た人の気分をぶち壊している、ということを全く考えていません。

 普通は、常連になればなるほど店への愛情も深まりそうなものなのに、常連になればなるほど、気の緩みからマナーを欠いてしまったり、ひどい場合には、逆に横柄に、わがままになる人も少なくないようです。(これは日本人の特徴らしいです)

 それでも、本当の常連ならまだしも、常連ヅラするために、初めて来たくせにわざと偉そうにしてみたり、豪放な人間と思われたいために虚勢を張っているのか、のっけから傍若無人なワガママを言ってくる輩もいます。

 しかし、見栄を張ろうとか、自分の要求を押し通したいという自己満足的な発想をしている時点で、マナーもへったくれもありません。

 マナーは、決してお店が恰好つけて要求しているものではなく、全体への気遣いです。
 大切な人のお祝いをしようとしている横で、チンピラのように振る舞ったり、よれたTシャツ姿やジャージでいるのは、なんとも不粋ではないでしょうか。

 その人にとっては、そんなに特別な日じゃないかも知れない。
 でも、隣に座っている人は、特別な日なのかも知れない。
 だから、どんな人でも、いつでも、キチンとした格好をしてレストランを利用すること。
 それが、マナーであり常識なのです。

 もちろん、キチンとした服装というのは、完全な正装じゃなければいけないわけではありません。
 ナチュラルで、時代に合ったお洒落をすれば良いと思います。

 少し前までは、男ならネクタイ着用、といわれていましたが、最近はクールビズの影響もあり、ノータイでもそれほどラフには見えなくなりました。

 正装ではないがラフでもないお洒落、というのは難しいと感じる人もいるでしょうが、それはもうマナーというよりその人のお洒落や着こなしのレベルの話なので、普段からそのセンスを磨くしかありません(笑)

 難しいと思うのは、普段からそういう意識で着こなしをしてないからであり、それが自身のファッションのレベルだと思ってあきらめましょう(笑)
 
 無難な服装としては、男性はテーラードジャケットを着れば十分だと思います。
 中年以上ならスーツでも良いですが、若い人の場合、接待ならともかく、プライベートの食事でスーツだと、「いかにも」過ぎて、逆にお洒落には見えないかも知れません。

 また、席についてもジャケットは脱がないほうが良いでしょう。
 西洋の服装マナーでは、ワイシャツは下着にあたり、公式の場でジャケットを脱ぐのは下着になるのと同義で、失礼に当たるため、ジャケットを着たまま食事をするほうがベターです。

 女性の場合、レディ・ファーストの西洋文化において、レストランでは女性が主役なので、出来る限りおめかしすることをお勧めします。
 そうすれば、お店の雰囲気も華やいで、周りのお客様も気持ち良いですし、サービスする側も、「こんなに気合の入れた服装でウチの店を選んでくれた」と思って、張り合いが出てきます。

 上等な服装がなくとも、落ち着いた大人の格好であれば問題ありませんが、肌の露出の多いものや、薄すぎる服装、性的なアピールが強い服装など、品の無い格好は避けましょう。 

 男性の場合は、女性とは逆に、あまりおめかしし過ぎるのは良くありません。
 これは先のレディ・ファーストの裏返しで、女性が主役になるべき場で、男性の方が目立つ服装をしているのは格好の良いものではない、とされています。

 また、女性もいくらドレス・アップするといっても、食事の場にふさわしくないほど派手な格好は避けましょう。特に手元は不衛生に見えるので、爪などにゴテゴテ装飾しないようにしましょう。
 口紅は薄い方が良いです。あまり濃く塗ると、グラスにべっとりついてしまい、スマートではありません。
  


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