** テーブルマナー講座 **

食事中の作法@ 基本編


 ここからは、食事の流れに沿った、テーブルマナーの実践的な説明をします。

●入店する時

 レストランに入店する時から、マナーはスタートしています。

 西洋文化はとにかくレディ・ファーストです。
 男性が扉を開けて、女性を先に入店してもらい、女性を主役として、とにかく男は女性のエスコート役です。
 
お店の店員が扉を開けてお迎えしてくれた場合もレディファーストで、男性から入店してはいけません。

 この感性は、日本人には乏しいかも知れません。
 何故なら、日本料理店では全くの逆で、日本の慣習では、主人たる男性が先に立つのが序列だからです。

 ですが、西洋文化であるレストランを利用する際は、「レディファースト」を意識しましょう。

●従業員が椅子を引いたら

 従業員に席を案内された時、それなりのレベルのレストランだと、従業員が椅子を引いてくれます。
 近い人からつい座ってしまいそうですが、一番最初に席を引いた席が上座、つまり、主賓が座る席です。
 カップルであれば、女性です。

 自分がその椅子の近くにいると、「自分のために引いてくれたのかな?」と思いがちですが、必ずしもそうではないので、気をつけましょう。
 女子会のような会食だと、上下関係がないため微妙なところもあるでしょうけど、とにかく最初の席が上座と考えて対応しましょう。

●ナプキンの使い方

 レストランでは、席に着くと、テーブルにはナプキンが畳んでありますが、この使い方は、人によってマチマチで、正しい使い方と言われると、意外とわかりにくいものです。

・いつナプキンを取るか
 ナプキンをいつ取って膝にのせるかというのは、ちょっとしたことですが、意外と気になるものです。
 主賓がいる場合は、主賓が手に取ってから取るのが良いですが、主役の人がなかなか取らない場合もあります。
 一番無難なのは、食前酒が運ばれてきた時に、膝に乗せるのが良いでしょう。
 食前酒ではなく通常のドリンクをとった場合や、水だけの場合は、オーダーを終えたら膝に乗せると良いでしょう。

・ナプキンをかける場所
 二つ折りにして、折り目の方を自分、分かれている端の方を膝先にして、膝の上に乗せます。
 もし女性の方で、小さなポーチなどを持っている場合は、折り目を膝先に、分かれている方を手前にと、逆にして膝にのせ、二つ折りにしたナプキンの間にポーチを挟み入れます。
 使う時は、裏側を使います。くれぐれも、自分のハンカチなどを使わず、口にソースがついてしまった時も、ナプキンで拭きましょう。
 ナプキンが汚れるのが気になる人もいると思いますが、全く気にする必要はありません。そのためにあるものなのですから…。
 むしろ、自前のハンカチを使ってしまうと、「このレストランのナプキンは汚くて使えない」という意思表示になってしまうので注意が必要です。
 
「そうは言っても、あんまりベトベトに汚してしまうのは…」と思ったアナタは、そもそも口元をそこまで汚さない綺麗な食べ方を心がけましょう(笑)

 特に、油ものを口にした時は、要注意です!
 唇にオイルがついたままワイングラスを口にすると、グラスにべったり跡がついてしまい、あまり格好よくありません。
 だから、ワインを口にする前には、軽くナプキンでふいてからワインを飲むのも、大切なマナーです。特に女性の場合は、口紅にも注意です!

・中座する時
 食事中に中座すること自体がマナー違反です(これは日本の食事でも行儀が悪いことです)。
 しかし、やむを得ない場合は、ナプキンを綺麗に折って、椅子の背にかけておきましょう。
 目立って気になる場合は、座席の上でも構いません。

・店を出る時
 ナプキンは、ディナーの時間が全てが終わったらテーブルの上に置きます。それがディナー終了のサインになります。従って、基本的に店を出る直前に置きます。
 ここで注意することは「ディナー」というのは食後の歓談も含まれているので、デザートを食べ終わったらすぐに置くわけではありません。
 食べ終わったら、さっさとナプキンをテーブルに置いてしまう人がいますが、それは「早く帰りたい」という意味になってしまいます。

 帰りにテーブルの上に置く際には、畳まずに左側に置いて席を立ちます。
 この時、あまり綺麗にナプキンを折り畳むと、「サービスが悪かった」という意味になるので注意が必要です。
 どうしてそういう意味になるのかというと、レストランでは、お店が用意したものの片付けは全て従業員の仕事であり、お客さんが手をほどこす必要がないのに、そこでお客さんがわざわざナプキンを綺麗に畳むということは、「従業員のサービスが行き届いていないために、自分でやりました」という意思表示になる、というわけなのです。
 とはいえ、グシャグシャにしたナプキンをテーブルの上に置くのは、さすがに見た目的にも美しいものではありません。
 だから、無造作にテーブルに置くよりは、大雑把に畳んで置くくらいが良いでしょう。
 ただ、本当にサービスがひどいと思ったのなら、これ見よがしに「これでもか!」というくらい綺麗にナプキンを畳んで、テーブルに直角にピシっとナプキンを鎮座させましょう(笑)

●ナイフ・フォークの使い方

 テーブルマナーには、食事中、ナイフやフォークはどのように使うかとか、食事中はナイフフォークをハの字の置くとか、色々な作法があります。
 こうした形式の全ての根底にある理念は、「その場にいる全ての人が、気持ちよく時間を過ごせるための気遣い」に集約されていて、一つひとつにちゃんと意味があります。

 日本でも、お箸の取り方や、茶碗は手に持って食べる、といった行儀作法があるように、だらしのない、みっともない食べ方というのは、周りの人を不快な気分にさせてしまうことがあります。

 だから、周りの人に対する最低限の気遣いとして、ナイフ・フォークなどの作法は必ず覚えておきましょう。
 というわけで、その意味について説明します。

・食べ方
 まず、ナイフが右手、フォークは左手が基本です。
 ポイントはフォークの使い方で、フォークで料理を食べる場合は、フォークの腹の部分ですくって食べるか、フォークで食材を刺して食べますが、必ず一口で食べられる分量の時だけ刺して食べます。
 大きな食材の場合は、一口で食べられる大きさに先にナイフで切ってから口に運ぶようにします。

 フォークで刺した料理をかじって食べてはいけません。
 
これは、かじり跡が見えると、汚らしく見えるからです。
 日本料理では、大きな天ぷらをお箸でとってかじって食べたりしますが、レストランでは、「かじる」という料理は、ほとんどないと思ってください。そのためにも、ナイフで切るのは一口サイズの大きさであることが大切です。

 また、フォークで食べる時は、ナイフを置き、フォークを右手に持ち替えても構いません。

※ちなみに、これはフランス式のナイフ・フォークの使い方ですが、イギリス式はかなり違います。イギリスでは、フォークですくって食べてはいけません。料理を、ナイフを使ってフォークの背にのせ、それを口に運びます。フォークを右手に持ち帰るのも×です。

 また、ステーキなどをナイフで切る時は、食べるごとに切ります。
 最初に全部切ってしまってはいけません。これは、「汚らしい食べ方」とされていますが、もともとは先に切り刻んでしまうと肉汁などが流失して、しかも冷めやすくなり、美味しさが損なわれてしまう、下手な食べ方だからです。

 ただし、骨付きの仔羊などは、最初に骨の部分を肉から切り離します。その方が、綺麗に食べられるからです。

 これらは基本中の基本なのですが、こうした作法を、知っていてもないがしろにする人をたまに見かけます。

 そういう人は決まって、

「ガイジンだって、いつもそんなにかしこまって食べてない。そんなキチキチして食べるのは、むしろ海外の素人だ」

と言いますが、それは大きな勘違いです。

 確かに、ヨーロッパに行っても、マナー通り食べていない人を見かけることは多々あります。それは事実です。

 しかし、だからといって、マナーなんてどうでもいい、ということにはなりません。
 それは、日本人でも、日本の食事の作法を正しく知っている人は意外と少ないのと同じです。

 例えば、日本人でも、うっかり刺し箸をしている人、渡し箸をしている人は、少なくないように思います。さらに、お箸を作法どおり両手を使って取る人となると、結構まれではないでしょうか?

 日常なら、それほど問題ないかも知れません。しかし、それなりに格の高い料亭や割烹に行くならば、和食だって正しい作法で食べるべきでしょう。
 いや、街の食堂であっても、基本レベルの作法は、常識としての「行儀」としてきちんとすべきでしょう。
 しかし日本でも、教養レベルの個人差によって、本人が知らず知らずのうちに無作法をしているのに気付いていないことはよくあることです。

 つまり、日本人だからといって、全員が正しい日本の作法を理解しているとは限らないように、ヨーロッパでも、マナーを知らない・守らない西洋人は沢山います。

 TPOに応じてマナーを使い分けるのは常識です。何より、目上の人や、まだそれほど親しくなっていない人と食事をする場合などは、行儀よく振舞うにこしたことはありません。
 マナーにルーズな外国人がいるからと言って、「マナーなんて気にしなくていい」と思うのは、大きな間違いです。

 というわけで、ナイフフォークも、きちんと使うように心がけましょう。

・ナイフフォークの置き方 
 食べていない時に、ナイフやフォークをどうするかについて。
 これは、主に従業員に対する気遣いです。(日本人に一番欠けているのは、おそらくこの「お客さんが従業員を気遣う」という感性かもしれません)

 まだ食べている時は、お皿の上に、ナイフ・フォークをハの字にし、フォークは背を上に向けて置きます。
 これは、食事中のサインです。
 持つところをテーブルに置き、お皿にかけるように置いても構いません。そうすることで、「まだ持っていかないで」という意味になります。

TM02.JPG - 20,686BYTES

 そして、食べ終わったり、まだお皿に料理があっても残す場合などは、ナイフ・フォークを揃え、フォークは腹を上に向けて横向きにお皿の上に置きます。また、ナイフの刃は内側に向けてください。
 これが、食事終了のサインです。(横向き、または斜め向きがフランス式、縦向きがイギリス式)

 お皿の上のナイフ・フォーク類はお皿と一緒に下げられるので、従業員が運びやすいよう、ナイフフォークを皿の上に完全に置きましょう。
 次の料理では新しいナイフ・フォークを使用します。

TM01.JPG - 22,114BYTES

 ちなみに、ナイフレスト(ナイフ・フォーク置き)が用意されているビストロクラスのレストランでは、ナイフフォークは同じものを使い続けるので、食事が終わったらナイフレストに置きます。
 これが、そのお皿の料理を食べ終わったことのサインになります。

 コースなどでは、前菜が何品か続き、魚料理・肉料理と進みますが、基本的に料理は一つずつ順番に出されます。
 中華料理のようにテーブルに何品も並べないので、次の料理を出す時には、前の皿は下げられます。

 従って、給仕する人がサービスしやすいように、食べている途中なのか、食べられなくて残すのか、そういうことをスマートに伝えるために、こうした作法が生まれたのです。

 日本の飲食店では、「すみませーん!」と大声で叫んでいるお客さんが多いですが、あれは全くもって品がないとしか言いようがありません。

 確かに、呼ばないと気付かない従業員に一番問題がありますが、すぐ側に控えているにもかかわらず、それを探しもせず無闇に声を上げている輩も少なくありません。

 特に高級レストランでは、お客さんの近くで立っていると、監視されているようで、お客さんも落ち付かないので、少し離れた所でこっそり控えているものです。
 そのため、お客様の視界からは見えないことがよくあります。でも、必ずお客さんのことを見ているので、少しでもお客さんが従業員を探すような素振りをすれば、すぐに出て行くので、声を上げる必要はありません。

 また、食事の進行具合をチェックして、お皿を下げたり、次の料理を提供するタイミングを計っています。
 だから、お客さん側としても、従業員としても、余計な声をかけたりせず、お互いスマートな流れを作るために、ナイフ・フォークを使った食事中のサインや、食事終了のサインなどが存在するのです。

 つまり、ナイフ・フォークのサインは従業員とのコミュニケーションの一部であり、それが結果的に、自分自身が気持ちの良い時間を過ごすためにあるものなのです。

 しかし、これしたことを考えずに、何かとすぐに従業員を呼びつける日本人は少なくありません。
 これはどうやら、追加注文などをしたい時に、大声で呼んで従業員を即座に飛んでこさせることで、本人は「デキル男・女」を演じているつもりなのでしょう。(水商売系の人や、体育会系のサラリーマンに多いです)

 しかし、はっきりいってこれは、他のお客さんにとってはすごく耳障りですし、非常に興醒めです。従業員にとっても、すこぶる不快です。

 居酒屋などで、上司のビールが残り1センチくらいになると、素早く声をあげて従業員を呼びつける人って、よく見かけませんか?
 それを見て「気が利く奴だ」と思う人もいるかもしれませんが、そんなの、気が利くというより、腹を探れば上司に媚売って点を稼いでるだけに過ぎません。
 自分の出世のためのゴマスリで周りの雰囲気を乱すことがカッコイイですか??これをだだの「自己中」と言わずして何と言えましょうか。

 上司や先輩から仕方なくやらされていることで、本人の意思とは関係ないのかも知れませんが、レストランの空間は、あくまで色々なのお客さんの共用の空間であり、マナーからは外れた行為であることを忘れてはいけません。

●食べる早さ(食事の進度)

 これも、日本人には相当欠けている感性だと思います。
 複数人数で食事をする時は、食べる早さを周りに合わせながら食べるのが正しいマナーです。

 先ほども書いたように、コース料理は一品ずつ出して行くのが基本です。
 だから、人によって早い遅いがありすぎると、先に食べ終わった人は、次の料理までに間が空いてしまいます。
 逆に、一人だけ遅かったりすると、気まずい雰囲気になり、無理に急いで食べると味がわからなくなってしまいます。

 といって、食べ終わった人から順に料理を出していくと、一方では、デザートを食べているのに、一方ではいまだに前菜を食べているという状況だって有り得てしまいます。

 それでも、みんなで何かを食べていればまだ良いのですが、例えば4人で食べていて、3人はもうデザートも終わってコーヒーを飲んでいるのに、一人だけまだ魚を食べているとなると、かなり気まずいというか、給食時間が終わっても取り残されて食べているくらいの落ち着かなさか、まるで罰ゲームのようなムードが発生してしまいます。

 それに、サービスをする側としても、一人ひとりがあまりにバラバラのタイミングだと、サービスもしにくいし、料理も作りにくくなってしまいます。

 確かに、大人数の会食となると、合わせるにも限界はあります。
 しかし、二人だけ、特にカップルで来ているにもかかわらず、大切な人であるはずの相手への気遣いをせず、自分のペースで食べている輩は本当に多いです。
 圧倒的に多いのは、男が先に食べてしまう、というケースです。

 確かに、ノロノロ食べていたのでは美味しくないと思うかもしれませんが、それは完全に自分のことしか考えていません。
 取り残された相手が、落ち着かない思いで食べているその気持ちを考えたことがありますか?

 彼氏一人で、食べるそばから食器を下げさせて次の料理を要求し、ひどい場合は、彼氏は先にメインまで食べて、彼女はまだ食べているのに自分の分だけ片付けさせ、タバコを吹かしてくつろぎモードに入ったりするヒドイ輩もいます。
 そうなってしまうと、なんだか食べる気がしなくなって、本当はまだ食べられるのに、仕方なしに自分の料理を途中で「下げて下さい」と言う女性だっています。

 もちろん女性も、マイペース主義で食べるのが遅い人は、相手のことを気遣ってスピードを早める必要はあります。
 
しかし、身体的に食べるのが遅い人が早く食べようとするのには限界があります。

 何より、レストランで食事をしようという動機の中に、二人で楽しい時間を過ごしたいという思いがあるのなら、リードする男性が女性を気遣うのが当然でしょう!

 単純にウマイものをがっつきたいだけなら、男同士で行くか、そういう相手と行くべきです。

 ナイフフォークの使い方など、形式的なマナーは完璧でも、これが出来ていないという人は本当に多いです。
 しかし、これを見ただけで、「この人はマナーの本質がわかってないな」と、一瞬のうちにその底の浅さがわかってしまいます。「馬脚を現わす」とは、まさにこのことです。

 テーブルマナーの本質は、あくまで「気遣い」であり、そのために生まれた形式です。
 ただ形式だけを守る事でマナーが出来ていると思っていたならば、それこそ「猿真似」に過ぎません。

 むしろ、形式的な動作は多少怪しくても、周りの人を気遣い、みんなで身持ちの良い時間を過ごそうという精神が見える人の方が、よっぽど好感が持てますし、マナーに適っていると思います。

 


テーブルマナートップへ          次の項目へ

 

 →TOPへ