飲食業界はなぜブラックか@

 最近、某居酒屋チェーンや、某牛丼チェーンの話題を筆頭に、「飲食業界はブラック」という評判が広まっています。

 同業の人間として、すごく情けないと思うとともに、何とかしたいなあと思う今日この頃。
 
ですが、正直言って飲食業界は、程度の差こそあれ、ほとんどがブラックと言えるでしょう。
 
カフェなど一部の業種ではやや事情は違うようですが、少なくともレストラン業界は、長時間労働が当たり前になっています。

 それには、色々な理由があります。

 営業時間がそうさせてしまったり。
 徒弟制度だった自体の古い慣習が残っていたり。
 一番の問題は、
業界全体が長時間労働の不透明な人件費でやってきたから、人件費含めた原価構造がおかしくなって価格相場もおかしくなり、それで抜け出せない悪循環になっている面が大きいと思います。

 また、最近よく問題視されていることとして、日本の風習が、モノにはお金を出すけど、人的サービスにはお金を出さないような慣習がそうさせている、と言われています。
 飲食に限らず、小売店でも、チップを払うわけでもなく、いい接客を受けて当たり前、みたいな

 だから、サービスに手間がかかるわりに、価格は上げられず、いろいろな歪や無理が生じてしまう。

 昔は(今でも?)、レストランは水商売と言われ、社会的には産業として認められていませんでした。
 だから、年配のお客さんなんかには、自分が大学を出てると言うだけで驚かれることも多く、その大学も、それなりの大学だったので、大学名を言うと「何でこんな仕事に??」と言われることが何度もありました。

 しかし、今日では一流大学を出て飲食の世界に入ってくる人は決して少なくありません。
 それは、この業界は好きで入ってくる人が多いからです。

 僕はもともと食べ歩きや料理が好きで、レストラン自体に憧れみたいなものを持っていたので、水商売に見られているとか、労働環境とか、あまり考えずにこの業界に入りました。

 でも、いざ働いてみると、何よりもその"過酷な長時間労働"に、入ったことを後悔したことが何度もありました。

 また、「職業に貴賤なし」という言葉があるものの、現実には見下されることはたびたびあり、嫌な思いをしたことは何度もあります。
 しかし、勉強
が出来なかったから飲食業で働いてるとか、必ずしもそうではないので、差別的に見られる筋合いはないと思います。
 
就職活動をサボって飲食しか内定を貰えなかった、という人もいると思いますが、本当に好きでこの業界に入ってくる人は本当に少なくありません。

 子供の頃、親に連れて行ってもらった楽しい外食、学生時代、友達や恋人と過ごした幸せな外食、そんな経験が、飲食を仕事にしてみたい、という動機になっている人は多く、そこに育ちや学歴はほとんど関係ありません。

 だから、社会的地位とか収入とか、そんなオトナ的発想のない小学生に「将来なりたい職業」を書かせると、「ウェイトレスさん」や「コックさん」などと書く子供が、今でも必ず何人かいるそうです。
 それに、一般企業に勤めても、サラリーマン・OL暮らしが性に合わず、自分の店をやりたい、カフェを開きたい、などと思って独立する人は昔から多くいます。

 実際、飲食の仕事は、すごく楽しくやりがいのある仕事です。
 
レストランの仕事自体に、「せっかくいい大学出てこんな仕事を…」と思うことは、ほとんどありません。

 でも、言い訳の余地がないのが、労働環境。
 こればっかりは、どこをどう見ても負け組です。
 誰かに見下されようと、「好きでやってるから」と言いたいけど、あまりの労働環境の酷さいは
恥ずかしくなり、情けなく、虚しい気持ちになることは多々あります。

 もはや学歴とか仕事の中身という問題ではありません。
 連日、寝る時以外は店にいるのが当たり前のような環境になると、生きてる意味がわからなくなることもあります。

 結局は、このせいで割りに合わない、と思うだけじゃないかと思います。

 だから、本当に何とかしたい。

 これを解決することができれば、きっと飲食業で働く人々のモチベーションが上がり、そうすれば必然的に飲食店のレベルもあがり、それは、消費者にとっても喜ばしいことになり、食文化が向上していくと思うのです。

 まだ、答えは出ていませんが、まずは、飲食店の労働環境の実態や、疑問点について、多くの人に知ってもらうこと。

 それがはじまりだと思っています。

 そんなわけで、ここでは、飲食の労働環境に関することついて、あれこれ書いてみたいと思います。

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