** テーブルマナー講座 **
食事中の作法A テクニック編
●レストランは予約すべき?レストランを利用する時は、高級店になればなるほど、予約するほうが良いでしょう。
それは、簡単な料理を出す店と違って、高級レストランには準備が必要だからです。高級なフランス料理となると、手の込んだ料理も多いので、仕込には相当な時間がかかります。
また、そのお店のシェフの料理のレパートリーにあるからといって、常にその料理が出せる用意があるとは限りません。
用意すべき食材も高価なものが多いので、ある程度の来客予測がついていなければ、十分な仕入れが出来ないのがレストランの実情です。そこで、事前に予約を受けて来店人数・時間を確認し、メニューの要望を聞いたりすることで、スムーズな対応が出来るのです。
言い換えれば、早めに予約して、こちらから食べたい料理を指定したりする事で、期待通りの食事にありつくことができる、とも言えます。
行ってからお目当ての物が無かったり、苦手なものばかりだったら残念ですよね?
なので、好き嫌いなどの細かい要望を出しておけば、より木目細かな満足が得られるでしょう。予約は、“しなければならないもの”、というよりも、“より楽しむためにするもの”、と考えた方が良いかもしれません。
また、レストランの客席の回転(入れ替わり)は、店によって大きく異なります。
フランス料理のフルコースを食べるとなると、食べるのに1〜2時間、そして食後にもまったりとくつろぐ時間を考えると、夜7時に入店したお客さんが10時過ぎまでお店にいることは珍しいことではなく、一度満席になると、もはやその日はそれ以上お客さんは入れない状態になります。
ファミレスのように入り口で20分〜30分待っていれば席が空くという保証はありませんし、ラーメン屋のように、食べ終わったお客さんに即時退店を促すようなことも出来ません。だから、お店側としても、お客さん側としても、お互いのためにも、予約をした方が良いということになります。
●メニューがこない!?
高級なレストランに行くと、席についてもすぐにメニューを渡されないことがあります。
そこでつい、普通のレストランと同じ感覚で、「メニューが来てないんですけど〜」と言ったりする人もいるでしょうけれど、ある程度の格の高いレストランでは、メニューは最初に渡されないことがあります。というのも、格の高いレストランでは、まず食前酒を頼み、それから料理を考える、というのが順番になっています。
それなりのレベルのレストランなら、メニューを渡し忘れるなんてことはまずあり得ないので、メニューが来ないとしても心配には及びません。料理は逃げませんので、のっけからがっつかないようにしましょう。だから、最初に従業員が席に伺う時も、メニューは持たずに「食前酒はいかがされますか?」と声がけされることもあります。
また、その時も、食前酒のメニューは特になく、口頭の場合もあるので、食前酒の知識がない場合は、無難に「シャンパン」をお願いするか、「すっきりと軽い炭酸がきいていて、少し甘みのあるもの」というように、好みを伝えて、お任せするのが良いでしょう。メニューがないのに聞いてくる、ということは、好みを伝えれば対応してもらえる、ということの裏返しでもあります。
こうした順番は、えらくもったいつけてるように感じるでしょうけど、これはもともとの外国人のディナーの楽しみ方の違いから来ています。
欧米の大きなレストランでは、入口前にウェイティング・バーといって、軽く一杯飲む場所がある店がたくさんあり、レストランの席に着く前に、まずそこで軽く一杯飲む人も結構います。
また、フランス人などは、ディナーに3〜4時間くらいかけてゆったり楽しむ人も多いそうなので、席に着いてからも食前酒を片手におしゃべりに夢中になり、注文するまで30分以上かけることも珍しくないそうです。
だから、日本でもディナーレストランでは、その手順を踏襲しているわけです。もちろん、フランス料理店が全てそうというわけではありませんし、日本のレストランでそんなところまで無理に外国人の真似をする必要はないと思いますが、高級レストランに出かけてディナーをとるということは、そういう楽しみ方をする人もいる、ということは知っておいても良いでしょう。
というわけで、席についたらまず食前酒のことを考えます。もし食前酒を飲まないのであれば、「すみません、今日は食前酒は飲まないので、お料理のメニューをいただけないでしょうか」と言えば、スマートだと思います。
日本人の場合、どうも「うまいもの」を食べることだけを目的に、グラン・メゾンクラスのレストランに行く人が多く、仰々しいサービスは省略してさっさと料理を出してくれ、という人も少なくないようですが、その部分だけに偏重して大金を出すというのは、なんとなく粋じゃないというか、浅ましい感じがします…
グラン・メゾン級のレストランで注文する時は、一人当たりのオーダー皿数と構成を揃えましょう。
コースにせよ、アラカルトにせよ、前菜と主菜を注文し、デザートまで食べる場合は、人のよって皿数が違うと、料理を出すタイミングも、一人ひとりの食事の進行も、バラバラになってしまいます。もちろん、ある程度はお店でタイミングを調整しますが、例えば一人が前菜二品と主菜一品で、もう一人が前菜なしの主菜一品というくらい差があると、出す方も困惑しますが、食べる方も困るでしょう。
大衆的なビストロやカジュアルなレストランならあまり問題ありませんが、格の高いレストランでは、基本的にシェアしないのがマナーです。
するとしても、ちょっと味見をする程度に控え目に行うのが行儀の良い食べ方で、当たり前のように前菜一皿を完全に分け合ったりするのはマナー違反です。
だから、お互いに同じ数の料理を注文するのが無難です。「何て窮屈なんだ」と思うかも知れませんが、これが本当の意味でスマートに食事を楽しむ、ということです。
日本料理の作法でも、居酒屋や食堂ならともかく、料亭の本膳料理などで料理を分け合ったりするのは行儀が悪いことです。もし、カップルで食べる量が違い、二人とも満足したいから男性の方の皿数を増やしたい…などという場合は、事前にそれを店に伝えましょう。
そうすれば、ポーション(量)を加減してくれたり、お店の方で最初から料理を取り分けて盛り付けてくれたり、女性が一品食べている間に男性には二品出したりと、色々な対応してもらえます。
そうすれば、テーブルの上でゴソゴソ取り分けなくて良いし、熱々の美味しい状態の料理を二人とも食べることができます。こう考えれば、面倒なマナーのように思えて、実は食べる側も、お店側も、お互いに自然に、快適に過ごせることだと思いませんか?
逆に、こうしたことを考えなかった場合、どういうことが起きるでしょうか。
男性一人、もくもくと前菜を食べて、女性はずっと待っている…、または、男性が前菜を食べている時に、女性はいきなり主菜からはじまる。なんか、ヘンですよね?
それとも、前菜も主菜も全部いっぺんに持ってきてもらう…なんて、もうレストランのディナーの食べ方じゃないですよね?
第一、美味しい状態で食べられません。このように、多少窮屈に思えても、ちゃんと食事の流れや雰囲気を大切に考えていたら、皿数を合わせた方が良い、ということに行き着くはずで、何か事情があるのなら、それをレストランに伝えればいいわけです。
これは、ルールというより、自分たち自身が、美味しく、快適に食事を楽しむための、工夫とも言えるのです。
これは、大衆レストランでも多少は同じことが言えます。
例えばファミレスでも、てんでバラバラな頼み方をしてしまえば、テーブルの上は無秩序になってしまいます。
また、食事の進度がバラバラになるのは、大衆レストランだろうがファミレスだろうが、食べる側にとって、気持ちの良いものではないでしょう。
むしろ大衆店では、高級店のように人員を万全に配置しているわけではないので、バラバラなオーダーをしたらサービスもバラバラになることは避けられません。だから、より良いサービスを受けたければ、大衆レストランであっても、上手な注文をするにこしたことはない、ということです。